映画館で「通信機能抑制装置」導入が進まない訳 上映前のマナー呼びかけでも導入には慎重だ
映画館のスマートフォンのマナーが議論されている。せっかく楽しみにした映画鑑賞を、携帯電話やスマホの着信音や、液晶の照明に邪魔されてガッカリする。そんな経験は誰にでもあるだろう。劇場側は上映前に「マナーモードや電源オフ」を伝えている。
それでもなくならない映画客のスマホ使用に対して、「映画館に通信機能抑止装置を置いてくれ」との声が上がる。すでにクラシックコンサートやミュージカルの会場で導入されている装置は、映画館にも設置できるのだろうか。
映画館の鑑賞体験を台無しにする隣客のスマホいじり
映画館はお金を払って「違う世界」に連れていってくれる特別な場所。しかし、その非日常体験を台無しにする行為が「客のスマホ利用」だ。
「隣の客のスマホの液晶が明るくて気になる」「エンドロールまで没頭したいのに」「映画館クソ客ガチャ(※意訳・近くの席に座る客は選べない)」
上映中にもかかわらず、映画館でケータイやスマホを使っている人たちに向けられた「恨み節」にも似た声がネット上にはあふれている。
多くの劇場では作品上映前に「マナーを呼びかける映像」を流して電源オフやマナーモードを「お願い」している。だが、それでも手ぬるいとばかりに映画ファンからは「強制的に携帯電話の通話や通信をできなくさせる電波を劇場内に流してほしい」という声は少なくない。
クラシックの演奏を聴くコンサートホールや、ミュージカル、演劇の劇場ではすでに通信機能抑止装置(ジャマー)が導入されている。
東京・千代田区の「帝国劇場」では「音が鳴らないなど観劇環境の維持のため」(運営する東宝株式会社)に約10年前から抑止装置を導入した。上映時間中に限り客席内に作用するように装置を作動しているという。
映画館に目を向けると、すでに導入している劇場はあるのだろうか。一般社団法人「日本映画制作者連盟(映連)」事務局の事務局次長・小林恵司さんは「正直なところ、映画館で導入されているのは存じあげません」と話す。