映画館で「通信機能抑制装置」導入が進まない訳 上映前のマナー呼びかけでも導入には慎重だ
映画館で観客がスマホを鳴らしても、映画館で怒るのは別の観客だけだ。映画の製作者や役者が殴り込んでくることはない。ある大型シネコンでも「映画館で上映中にお客様同士が言い合いになり、警察を呼んだ事例はあった」そうだ。この場合でも、劇場側がリスクを負うことはおそらくない。
映画業界側の「導入しない理由」
映連の小林氏は、映画館への導入が現実的でない理由を語った。
「多くの映画館でバリアフリー上映(音声ガイド付き上映)が広まっています。視覚に障害のある人はスマホを使って音声ガイドをダウンロードし、イヤホンなどで副音声を聴きながら映画を鑑賞します。事前に音声データをダウンロードする必要があるので、上映前に通信ができないのでは困ります」
もう1つの理由は電波の干渉だ。「映画館は複数の劇場が壁一枚で隣り合っています。各劇場で上映作品も上映時間もまちまちです。劇場1の通信を妨害しようとして、まだ上映中ではない劇場2のお客さんの電話が使えなくなってしまいます」
ほかにも、最近はメディアミックス展開されたアニメ作品が上映されると、来場特典として「アニメタイトルのゲームで使えるレアアイテムをプレゼント」などの企画が催される。映画が終わったときに「スマホが使えずにアイテムがゲットできない」という事態になれば、多くのクレームが劇場に殺到するだろう。
というわけで、映画館に通信機能抑止装置が設置されることは今のところなさそうだ。
映画館のマナーCMは日本初のシネコンとされる「ワーナー・マイカル・シネマズ(現・イオンシネマ)」が1993年に日本で始めたという。「当初は『おしゃべりはダメだよ』などのほか、『禁煙ですよ』と呼びかけをしていました。時代の変化に伴って、『ケータイはダメ』『スマホはダメ』と項目が増えていきましたね。ですが、やはりスマホいじりを完全になくすことはできません」。
映画館で安心して最高の体験ができるのはまだまだ先のことかもしれない。それとも一人ひとりのマナーを根底から変えれば、もしかしたら……。
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