日本人が知らない「植物ブリーダー」の実態 日本ではマイナーだが、欧米では人気の職業

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──欧米先進国ではブリーダーは人気の職業だそうですね。

海外の集まりに参加すると、ブリーダーというだけで、皆さんが目をキラキラさせて迎えてくれます。日本ではまったく考えられません。欧米では園芸がややアカデミックな一般教養的趣味として位置づけられており、品種改良やブリーダーに関心を持つ知的レベルの高い人が多い。一方、日本では育種という言葉を知っているのは農業関係の人くらい。マイナースポーツの選手の気分ですね。

3大発明家の1人といわれた「植物の魔術師」

──育種に関わるドラマが描かれていますが、「育種家は無限界に侵入する探検家である」と語った「植物の魔術師」、ルーサー・バーバンクの話はとくに印象的です。

バーバンクはトーマス・エジソン、ヘンリー・フォードとともに、当時はアメリカの3大発明家と称されました。私財を投じてたくさんの品種を作ったが、新品種の権利保護がいっさいなされなかったので生涯貧乏でした。まさに育種のパイオニアといえる存在で、その“遺産”によって後のブリーダーは開発を進めることができたのです。

竹下 大学(たけしただいがく)/1965年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビール入社。同社の育種プログラムを立ち上げる(花部門)。現在は一般社団法人食品産業センターに勤務。技術士(農業部門)。2004年にAll-America Selections主催「ブリーダーズカップ」初代受賞者に。(撮影:今井康一)

今後、育種の分野でバーバンクのような大発明家が現れるかといえば、なかなか難しいでしょう。こういうものが人間にとってはいいと改良されてきた結果として、今の品種がある。品種の完成度が高まっているわけです。現在はより収穫量が多いとか、病気に強いとか、マイナーチェンジに近い改良が多く、とんでもない品種は作りにくくなっています。

ただ、日本で食べられていなかったキウイが国内でも栽培されるようになるなど、地域をまたいだ形で目新しいものが出てくることはあるでしょう。また、遺伝子組み換えは1つの切り口になる。ただ、人の口に入れるものなのでどうかという問題はあります。

──梨の幸水やリンゴのふじなど、最初は落ちこぼれのような存在だったのに、後に大ヒット品種に化けるというのも面白い。

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