今季の「千葉ロッテ」にこそ期待ができる理由 オフシーズンの主役が地道に「オンの主役」へ

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これら一つひとつは、それぞれ効果的な企画だと思うものの、逆に言えば、ファンや球界をあっと言わせるような斬新な企画でもない。ただ、このような地道な取り組みを、一歩一歩実現していくことで、利益を積み重ねていくのが、元エリート銀行員・山室晋也氏の本領だったのだろう(なお山室氏は2020年3月で退任し、サッカーJリーグの清水エスパルス社長に就任)。

利益追求の一環なのだろうか、『週刊ベースボール』同号によれば、今季の総年俸についても、マリーンズは12球団最低となっている(24億7590万円)。

ちなみに1位はホークスの65億2680万円で、マリーンズの2.6倍。ヤンキース・田中将大の今季年俸は25億3000万円で、マリーンズ1球団分をたった1人で上回ることになる。

しかし、それでも今季のマリーンズに期待できるのは、「年俸総額が低い→野球のスケールが小さい」という図式に陥る感じがしないからである。

ベイスターズやファイターズとはどう違うのか

この連載では、ベイスターズに加えて、もう1球団、ファイターズの編成戦略のことを取り上げている(『大谷翔平はいかにしてメジャーに飛翔したか』2018年5月)。そこで筆者は「どんな事情があれど、空気を読まずに、ナンバー1の選手を敢然と指名する」というファイターズの編成コンセプトを紹介した。

その結果が、ダルビッシュ有(カブス)と大谷翔平(エンゼルス)という、21世紀の球界を代表する2人の超・高校級プレーヤーの単独(!)ドラフト指名なのだが、ここ数年のマリーンズのドラフトも同じく、超・高校級プレーヤーを果敢に1位指名している。以下が、この5年間のマリーンズ・ドラフト1位指名リストである。

2015年:平沢大河(仙台育英高)
2016年:佐々木千隼(桜美林大)
2017年:安田尚憲(履正社高)
2018年:藤原恭大(大阪桐蔭高)
2019年:佐々木朗希(大船渡高)

2016年のみ大学卒の投手=佐々木千隼を指名しているが、それ以外はすべて高校卒である。また、その高校卒の中で、佐々木朗希以外が野手であることにも驚く。

というのは、それ以前の5年間の1位指名が、伊志嶺翔大(東海大・野手)、藤岡貴裕(東洋大・投手)、松永昂大(大阪ガス・投手)、石川歩(東京ガス・投手)、中村奨吾(早稲田大・野手)と、高校卒を完全に回避していて、そのうえ3人が投手という「即戦力・投手」志向だったからである。

マリーンズが目指すのは、西川遥輝や近藤健介、大田泰示、渡邉諒、中島卓也など、20代の高校卒野手が中心となって躍動する、ファイターズのようなチームなのだろう(すでにベテランのようなオーラを発散している中田翔ですら、高校卒のまだ30歳だ)。

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