「サブスクでヒゲダンを聴く」
10月18日放送のテレビ朝日系『ミュージックステーション』で、この言葉の意味を問いかけるコーナーがあった。20~30代はわかるが、50代以上はわからないという(「サブスク」=「北島三郎のスクール」、「ヒゲダン」=「ヒゲダンス」などの珍回答もあり)、テレビ的にはよくある展開となった。
東洋経済オンラインを読んでいる人であれば、たとえ50代以上であっても「サブスク」ならわかるだろう。「サブスクリプション」=定額制音楽配信サービスのことだ。ただ、もしかしたら「ヒゲダン」のほうについては、不明な人もいるかもしない。
「Official髭男dism」(オフィシャルヒゲダンディズム)という4人組バンドがあり、その通称が「ヒゲダン」。この「ヒゲダン」が今、音楽チャートを席巻しているのだ。
「Billboard Japan Hot 100」の11月11日付けランキングでは、2位に『Pretender』、3位『イエスタデイ』、4位『宿命』、12位『ノーダウト』、22位『115万キロのフィルム』、39位『Stand By You』、46位『ビンテージ』と、驚くなかれ50位以内に7曲がチャートインしている。
これは、昨年末の米津玄師、今年前半のあいみょんに並ぶ勢いと言える(両者についても、過去にこの連載で取り上げているのでご一読されたい)。
売れるのには理由がある。今回はこの「ヒゲダン」の音楽的特異性を分析したいと思う。20~30代が「サブスク」で自然に楽しんでいる「ヒゲダン」の曲を、50代の音楽評論家が分析したら、何が見えてくるのか。
ボーカルの「跳躍」という特異性
まず一聴して驚くのが、藤原聡によるボーカルの「運動量」の多さである。全体的にキーが高いのだが、その中で、低い音から高い音、さらに高い音へと、ぐんぐん跳躍していくのだ。
例えば『イエスタデイ』のAメロ。最低音は下のD(レの音=「♪『あ』めあがり」の『あ』)で、最高音は、何とその約2オクターブ上のC#(ド#=「♪くもらせ『てし』まったっていい」の『てし』)。
専門的な話となるが、かつては、全曲通して1オクターブに収まるのがヒット曲の秘訣と言われたのに対して、最近では全曲を通して2オクターブ使う曲も珍しくなくなってきている。しかし、冒頭のAメロだけで、いきなり一気に2オクターブ使ってしまうのは、明らかに「ヒゲダン」の音楽的特異性である。
ボーカルの跳躍については、この連載の昨年の記事=「『米津玄師』の曲がロングヒットし続ける理由」でも言及したもので、つまりは一種の音楽的トレンドとも言えるものだが、「ヒゲダン」の跳躍の度合いは、米津玄師のそれを優に超えている。
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