なんとなく使う「事実と真実」の正しい使い分け 日本人だからこそ「無意識」に使う日本語

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「ザーザー」「しとしと」……どう違うの? (イラスト:なとみみわ)

知ってる? オノマトペの「ルール」

アン:日本人が当たり前のように話していて、外国人から見るとなかなか理解できないのが、オノマトペ。雨や風の度合いを、みんな普通にオノマトペで話すでしょう? 雨が「ザーザー」降るとか、ポツポツ降るとか、しとしと、とか。

宮本:音象徴語(おんしょうちょうご)ですね。これらにもルールはあるのをご存じですか。擬音語や擬態語のルールは、

●濁音=大きいもの、重いもの、鈍いもの、汚いものを表す
●半濁音=清音と濁音の間のものを表す
●清音=小さいもの、軽いもの、鋭いもの、美しいものを表す

というものです。ですが、日本人はわざわざそれについて意識して使ってはおらず、感覚で話しているでしょう。さて、アンちゃん、ザーザー、ポツポツ、しとしと、だと、雨の強い順に並べるとどうなると思いますか?

アン:濁音のザーザー、半濁音のポツポツ、清音のしとしと、ということかな。

宮本:正解です。これを意識するだけでも理解しやすくなります。日本語はほかの国の言語に比べて音象徴語、つまり音を大切にする語が3倍とも5倍とも言われています。

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アン:この間、お腹が痛くて病院に行ったとき、お医者さんに「シクシク痛む? キリキリ痛む? ズキズキ痛む?」って聞かれて、その違いがわからずに困ったよ。日本人の親友に「日本人はなぜ、あんなにオノマトペでしゃべるん?」って聞いたら、「そのほうがわかりやすいから」って(笑)。アンちゃんには、余計わからんよ!

宮本:僕たちアナウンサーは、音象徴語ではあまり話しません。「先ほどまで小雨でしたが、雨足が少し強くなってきました」というように話します。同じように、ビジネスの場では、日本人も音象徴語で話すことはそう多くないでしょう。音象徴語は実は、日本最古の書物、『古事記』にも出てくるのです。神様が、日本列島を生み出すために矛をさしてかき混ぜるときに「こをろこをろ」と音を立てます。

アン:なんと! 日本の神様もオノマトペで話してたのか! もう、それは日本語の一部として、頑張って覚えないかんね。アンちゃんはこれからも、バンバン、ガンガン、ガッツリ、日本語を勉強するよ!

アン・クレシーニ 北九州市立大学准教授

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Anne Crescini

専門は言語学。アメリカのバージニア州出身。福岡県在住。研究と並行して、バイリンガルブロガー、スピーカー、テレビコメンテーターなどの活動をしている。西日本新聞にて日本の文化と言葉について博多弁で綴る「アンちゃんの日本GO!」を毎週、木曜に連載中。バイリンガルブログ「アンちゃんから見るニッポン」も話題。

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