なんとなく使う「事実と真実」の正しい使い分け 日本人だからこそ「無意識」に使う日本語

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アン:真実は人の解釈だから「私はそうは思わんけど」って言ってもいい。

宮本:そうです。真実は、人の心の動きであり解釈ですから、人の数だけあります。

アン:例えば、日本で軟水を出された外国人にとって「これは水です」は事実。でも、自分の認識している水とは違っているから「私にとってこれは水ではない」は真実。そして、真実は人の解釈だから、アンちゃんが「これも水やけんね。それが真実なんよ」って反論してもいいってこと?

宮本:そうです(笑)。軟水と硬水で例を出してくるところが、アンちゃんらしいですね。ほかに、事実と真実という言葉がよく使われるのが刑事ドラマです。AさんがBさんを殺してしまったのは事実。もし犯人が「殺そうと思っていなかった」としたら、それは犯人にとっての真実です。

アン:殺したのは事実だから「殺してないかもしれんやん」って反論できないけど、殺そうと思っていなかったのは真実だから「本当は殺す気はあったやろ?」って反論できる! 面白い!

宮本:そう、真実は人の解釈。だから、事実は「明かす」、真実は「語る」と言うのです。

じゃあ、「真理」って何?

アン:真実や事実に似た言葉で、真理という単語もあるよね? 真実や事実とはどう違うの? アンちゃんの中では「真理」は、聖書の「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです」の印象が強くて、キリスト教用語という認識なんだけど。

宮本:真理は、まことのことわり、と書きます。普遍的な理法、つまり絶対変わりようがないことを意味しています。「人が死ぬのは真理だ」と言うように。また、アンちゃんが言うように、宗教や物理用語として使われることが多くあります。

アン:では、宗教によって真理は変わってくるということか。

アンさんのトレードマークは上京のたびに原宿で買い足すという「日本語Tシャツ」(写真:アンさん提供)

宮本:仏教で言うところの真理の1つには、例えば「諸行無常」があげられるでしょうね。仏教用語で「現実の世界のあらゆる物事は、絶えず変化し続ける」という真理のことです。

アン:キリスト教では、神が子を愛しているのが真理。「あなたが神様を信じていなくても、神様があなたを愛しているのは絶対です」と言う。真理は反論できないから真実とは違うし、宗教によってその絶対が違うなら事実とも違う。だけど、その宗教を信じる人にとっては絶対本当っていうのはすごくわかる。

宮本:事実と真実は、過去に対する判断で、真理は宗教や物理の世界で永遠に変わらないものを指す、と考えるとわかりやすいかもしれません。

アン:真理は未来永劫、エターナル! 宮本さん、アンちゃんは今日も、日本語の美しさに感動した! これがアンちゃんにとっての真実よね!

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