ノルマに苦しむ営業マンたちの新たなる"憂鬱" 不祥事が起こる背景には構造の変化がある

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欧米ではすでに、顧客を訪問してヒアリングし、提案するといった複雑な「ノンルーティンタスク」の営業プロセスまでもが、「セールステックツール」と呼ばれるテクノロジーに置き換わり始めている。

「セールステック」とは主に、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(セールスフォースオートメーション)、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)と呼ばれる3つの最先端営業自動化ツールのことである。

顧客と営業の両方を一元管理できる

営業におけるマーケティングの分野では、これまでは各営業マンが個別に、いつどんな情報を送るかを判断し、企業側が一方的に想像する見込み客に手作業でメールを送っていた。これを双方向にして見込み客の精度を上げ、自動化してくれるのがMAだ。つまり、見込み客に対して、どのタイミングでどんな情報を送るかという初期設定さえしてしまえば、後は最も成功確度の高い方法を選んでMAがすべて自動でやってくれる。

SFAは見込み客への提案からクロージングまでの部分をサポートする。なかでもSFAの特筆すべき点は、全営業マンの全活動を記録しているため、最も成績のいい営業マンの効率的な業務の流れを逐一ピックアップし、把握することができることにある。これを営業部門全体でシェアすれば、SFAは並の営業マンの活動を、トップ営業マンの活動レベルにまで一気に引き上げることができる。

CRMは商品購入後の顧客との関係を維持するツールである。購入顧客の情報を一元管理できるのはもちろんのこと、一斉メール配信やアンケート調査などの機能もついている。そのためクレームなどが発生した際も、顧客についての情報をチーム全体で把握でき、迅速かつ適切な対応が可能になる。

また、顧客の活動と営業の活動、双方を記録しているため、どの行動がリピートにつながり、逆にどんな行動を取ると顧客が離脱しがちなのか割り出すことができる。だから、顧客に対するすべてのアフターサポートについて、最もリピートにつながる行動へと、アップデートし続けることができる。

セールステックを導入すると、企業は営業マンの行動を管理したり、営業の手法をアドバイスする必要がなくなる。したがってセールステックにいちばん最初に代替されるのは営業の管理職だ。営業には1人か2人のスタッフが残り、それ以外は不要となる未来が、今現在高い確度で予想される。

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