日本の半導体企業の元トップが選んだ新天地 紫光集団の日本拠点で大規模な開発体制を構築へ
――紫光集団に入ることになった経緯を教えてください。
3年くらい前、彼らがNANDフラッシュメモリを作るというときに、一緒にやらないかと言われた。そのときに武漢に行っていろんな話をしたが、やっぱり体力的に無理があるかなと思って断った。
でも、この(2019年)9月に今度はDRAMを一緒にやらないかと言われた。実は3年前と比較すると今のほうがはるかに体力がある。頭もしっかりしている。ならばやってみようと思った。このまま自分が老いていって何もしなくなるのは負け犬だとも思った。だから、何らかの形で成果を出して自分の人生を終えたい。
――坂本さんは72歳ですが、今のほうがはるかに体力があるというのは?
69歳の時から剣道を始めた。今でも毎朝300本から400本くらい素振りをしている。土日には剣道クラブに通っていて、実にいい気分転換になっている。
――この人に声をかけられたのが大きかったということはありますか。
(紫光集団でDRAM企業のCEOを務める)チャールズ・カオ氏だ。2019年6月に紫光集団がDRAM事業に参入すると発表して、それから2カ月くらいあとにカオ氏が日本に来た。そのときに会って、9月の後半にオファーがあった。
あちこちで私が講演をしたり、記事を書いたりしていたのを、彼らはずっと見ていたのだと思う。私のようにマーケットやオペレーション、開発まですべてを見ている人は中国のメモリメーカーにはいないと思う。そういった意味から私を選んだのだと思う。
自分の感覚として「わかる」ことが重要
――半導体事業で幅広い経験を持つ人は日本人でも少ないのでは。
なかなかいないでしょうね。日本の半導体企業の経営者は技術上がりの人がやっていることも多い。そういう人たちは、たぶんマーケティングやオペレーションのことがわからない。
キオクシアも悪くなり、競合が黒字を出しても1社だけ赤字になってしまった。ということはそういうこと(マーケティングやオペレーションが)がわかっている人がいないのでしょう。今は、ソニーが強いけれども最終的にコスト競争となったときにちゃんと対応できる手を打っているのだろうか。
――坂本さんは技術者出身ではありませんが、半導体事業を見てすべてがわかるというのは、具体的にどういう意味なのでしょうか。
自分の感覚でどのくらい「わかる」か「わからない」か。その見極めが必要だと思う。技術やオペレーションもマーケティングの専門にしている人たちと、よくコミュニケーションを取っておくと、ある程度の基礎はできる。そこから、お客さんや競合他社の人たちと話していくことで、技術の方向性やこの先どうなるのかといったことが判断できるようになる。
社長が技術の細かいところまでをわかる必要はあまりない。ある技術を使ったデバイスがどこのマーケットで使われるかとか、工場はどういう体制であるべきだとか、そういった判断が(経営者に)必要とされてくると思う。今でも私はセンサーメーカーや材料メーカーの相談役を3社だけ務めている。四半期に1度くらいはレポートを出したり、話を聞いたりしているが、彼らからは重宝されているし、私にとっても非常にいいことだ。
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