「おいしい無糖」が切り拓く紅茶飲料の新市場 紅茶ビジネス最前線(上) キリンの脱"お姫様路線"

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外食とコンビニの「コーヒー戦争」が激化している。2013年には販売数で「セブンカフェ」(セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブンイレブン)が「プレミアムローストコーヒー」(マクドナルド)を抜き去り王座を奪取。外食チェーンでも、スターバックスは1000店を超えてもなお好調を維持し続けている。
その一方で、ひっそりと紅茶市場で地殻変動が起きている。外食大手のモスフードサービスは「モスバーガー」に次ぐ業態として、セルフカフェ「マザーリーフ」で出店攻勢をかける。ティーバッグが主流の紅茶飲料市場では、味の素ゼネラルフーズ(AGF)やネスレがコーヒーで培った技術を生かしてシェアの切り崩しを進める。
業界関係者が異口同音に口にするのが、「この数年で紅茶が日常飲料として受け入れられるようになった」という現状だ。その背景にあるのが、「午後の紅茶」でシェアトップを走るキリンホールディングス傘下のキリンビバレッジ(以下、キリン)が切り開いたマーケティング戦略である。
「おいしい無糖」が男性を中心とした新規客層を開拓

キリンの主力ブランド「午後の紅茶」が売れている。2010年から4年連続で過去最高の出荷数量を記録。2014年は4780万箱(前年比2%増)と5年連続の更新を狙う。

牽引役は2011年に投入した「おいしい無糖」だ。この商品は年率2ケタ増以上の出荷数増を続け、13年は650万箱を突破。14年はさらに2割増の800万箱の販売を目指す。

「午後の紅茶」は1986年に日本初のPETボトル入り紅茶として発売。1990年までにミルクティーやレモンティーなど現在の主力商品が出そろった。飲料業界では、消費者からの認知度が高いトップシェア商品をどれだけ持っているかが重要となる。キリンは「午後の紅茶」で紅茶飲料のシェア4割超を握る。唯一のカテゴリートップ商品であり、同社にとっては重要な市場なのだ。

市場全体は縮小傾向

ただし、肝心の市場規模はコーヒー飲料の8500億円、緑茶飲料の3750億円に比べ、紅茶飲料は2150億円にとどまる(全国清涼飲料工業会調べ、2012年)。しかも、伊藤園の「TEA’S TEA」が大ヒットした2010年の2475億円をピークに、右肩下がりの状態だ。

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