「おいしい無糖」が切り拓く紅茶飲料の新市場 紅茶ビジネス最前線(上) キリンの脱"お姫様路線"

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キリンの調べによると、缶コーヒーや緑茶であれば、消費者は1カ月に10本以上飲むのに対し、紅茶だと6本以下と、大きな隔たりがあった。

しかも、紅茶飲料を多く購入するのは女性客のため、女性を意識したパッケージなどの商品戦略を採ってきた。ただでさえ小さなマーケットの中で女性客にターゲットを絞ったことが、顧客層拡大の足かせになっていた。

転機は2010年に訪れる。前年に伊藤園が「TEA’S TEA」で紅茶飲料市場に本格参入。一気にシェアを拡大したことでキリンは危機感を強めた。そこでキリンの立てた戦略が、無糖のストレートティー「おいしい無糖」を緑茶市場にぶつけ、高温・高圧のエスプレッソ製法で作った「エスプレッソティー」で缶コーヒー市場を切り崩すというものだった。

「エスプレッソティー」は投入当初こそ話題を集めたが、缶コーヒーからの乗り換え需要を取り込めず、思ったような出荷数とならなかった。その一方で大ヒットとなったのが「おいしい無糖」だ。

男性客の取り込みに成功

この商品は、2011年に従来の「アジアンストレートティー」をリニューアルして発売したもの。女性向けのイメージが強い「午後の紅茶」の商品戦略をガラリと転換した。茶葉についても、砂糖の入った従来のストレートティーがスリランカ産のティンブラを使っていたが、「おいしい無糖」ではダージリンに切り替え、「すっきり感を打ち出し、男性客の取り込みを狙った」(マーケティング部の淵田明香氏)。

波に乗るキリンは、マーケティングキャンペーンでも従来とは違った手を打つ。サッカー日本代表のザッケローニ監督をテレビCMに起用し、日本代表ユニフォームがついたノベルティグッズを用意するなど、より男性を意識した戦略を展開している。「とにかく敷居を下げて、男性にも親しみを持ってもらいたい」(淵田氏)。

キリンは早期に1000万ケースの販売を達成し、ブランドの確立を狙う。一方、伊藤園も2013年9月に無糖のストレートティーを投入するなど品ぞろえを増やし、追撃の構えを見せている。

紅茶を含む茶系飲料は、老若男女を問わず好まれる傾向があり、相応の潜在需要掘り起こしも期待できる。ここ数年の紅茶飲料市場の縮小をよそに、無糖商品によるシェア争奪戦は一層激しさを増しそうだ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と2人の娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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