「環境格付け」で高評価の日本企業が増えたわけ 政府の支援が後押し、株価上昇の好循環も

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38社もの日本企業がAリスト入りした背景には、政府による支援もある。

環境省は、今世紀末の気温上昇を産業革命時から2℃以内に抑えるべく、「企業版2℃目標」の設定支援事業を3年以上にわたって実施している。温室効果ガス削減をパリ協定と整合的に進める取り組みである「サイエンス・ベースト・ターゲット」(SBT)の認定企業は増えており、SBT認定企業数(60社)はアメリカの61社に次ぐ世界2位となっている(1月20日現在)。

SBT認定されると、CDPによるリーダーシップ評価の「削減目標」で高得点につながる。

また、G20金融安定理事会の「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の報告書への賛同企業数で日本は世界トップとなっている。経済産業省が「TCFDサミット」の第1回会合を日本で開催するなど、日本企業に賛同を強く働きかけていることが背景にある。CDPの質問はTCFDに準拠したものになっており、TCFD賛同企業の多さがCDP回答企業数の増加につながっている。

再エネ調達の後れが今後足かせに

もっとも、Aランク入り企業が増えているからといって有頂天になっていられない状況もある。

CDPジャパンの高瀬氏は「日本企業が高評価を獲得し続けるには、再エネ調達を大幅に増やしていく必要がある」と指摘する。というのも、「(Aリスト入りのハードルが)2020年以降、上がる可能性がある。その場合、再エネ調達で後れを取っている日本企業に不利に働く」(高瀬氏)ためだ。再エネ調達の遅れは、評価項目の1つである温室効果ガス削減状況での低評価にもつながる。

Aリスト企業のうち、アップルやグーグルの親会社であるアルファベットなどは自社で使用する電力の100%を再エネで賄うことに成功している。これに対して、日本企業は全般に再エネ調達の遅れが目立つ。石炭など火力発電への依存度が高く、国内での再エネ電力の普及が遅れているためだ。

CDPジャパンは、再エネ導入促進策の強化とともに、温室効果ガス排出削減目標の引き上げや炭素税の導入など「意味のある水準でのカーボンプライシング規制」の導入を日本政府に求めている。いずれも、エネルギー政策の根本的な転換につながるものだ。

そうした取り組みが進まなければ、日本企業の環境への取り組みは壁に突き当たることになる。世界的なサプライチェーンから外される懸念もある。「Aリスト企業数世界一」が今後も続くかは未知数だ。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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