深刻な「気候危機」、日本は石炭投資見直しを アイルランド元大統領が呼びかける意識変革

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スペインのマドリードで開幕したCOP25(写真:ロイター/アフロ)
第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議、いわゆる「COP25」がスペインのマドリードで始まった。地球温暖化対策の国際枠組みを定めた「パリ協定」が2020年から本格的に実施されるのを控え、各国が削減目標を引き上げるかなどが焦点になっている。
メアリー・ロビンソン氏はアイルランド共和国第7代大統領を務めた後、国際連合人権高等弁務官などを歴任。現在、“The Elders”(エルダーズ)議長として、人権やジェンダーの平等に関する活動に関わっている。
ロビンソン氏は気候変動問題についても危機的な状況にあり、若者たちの将来を脅かしているという点で「正義に反する」状態にあると警鐘を鳴らしている。ロビンソン氏の来日に際してインタビューした(インタビューは10月9日に実施)。

気候変動問題には正義が欠けている

──地球温暖化など、気候変動がもたらすさまざまな問題の深刻さについて、ロビンソンさんは「気候正義」(Climate Justice)という言葉を使っていますね。

アフリカの貧困国や先住民社会、太平洋の小さな島嶼国では、干ばつや海面上昇などの形で気候変動は日々直面する現実になっている。これに対して、欧米や日本のような先進国では、多くの人が自分の問題として捉えていない傾向があった。

そこで私は、「気候変動」ではなく、「気候正義」について話すようにしてきた。正義のない、公正さのない状態から、いかに正義のある状態にするかが重要だ。

私はアイルランドで大統領を務めた後、1997年から2002年まで国連の人権高等弁務官を務めた。そこでは人権問題全般や、ジェンダー、障害者や先住民に焦点を当てて人権活動に取り組んできたが、それらが気候変動とつながっているとは当時、あまり考えが及ばなかった。

高等弁務官の職を退いた後、小さな団体を設立してアフリカの人々に対する食料や水、住居などの支援活動を始めた。(国際NGOである)オックスファムの名誉会長も務めた。

2003年から2005年ごろにはそうした活動を通じて多くの人々と会う機会があったが、自然災害によって被害を受けた開発途上国の女性の農民は、「自分の身に何が起きているか理解できていない」と語っていた。気候変動がもたらした被害について、その女性は「神が私たちに罰を与えているのだろうか」とも述べていた。

人権問題に関わってきた者として、私は気候変動の領域においては正義が存在していない、公平さが欠如していると思った。

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