深刻な「気候危機」、日本は石炭投資見直しを アイルランド元大統領が呼びかける意識変革

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──母国アイルランドの人々は気候変動問題をどのように認識しているのでしょうか。気候危機は一般に知られるようになっていますか。

最近に関して言えばイエスだ。2018年10月に発表された「国連気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第5次報告書、通称「1.5℃特別報告書」によれば、産業革命以降の世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えることの重要性が指摘された。

2015年に合意された「パリ協定」で定められた目標である2℃以内に気温上昇を抑えた場合と、パリ協定で努力目標とされた1.5℃以内とでは、地球環境に与える影響が大きく異なる。今のままではほとんどのサンゴ礁は死滅するし、北極圏の氷は溶けてしまう。現に永久凍土も溶け始めており、二酸化炭素(CO2)のみならず、温室効果が格段に大きいメタンが大気中に放出されることになる。

IPCCでは、生物多様性に関する報告書や、陸上や海洋に関する報告書も発表している。こうした報告書に書かれていることを知って、気候変動がもたらす危機がいかに深刻であるかをアイルランドの人たちも最近になって理解するようになってきている。アイルランドは国際的な活動である「炭素中立性連合」に国家として加盟し、2050年の脱炭素化目標を明らかにしている。

日本の「脱石炭」に高まる期待

──日本の動きについてどうみていますか。

日本が(石炭火力発電など)石炭に投資を続けていることに、国際的な懸念が広がっている。今回来日して「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の会合に参加した。私は日本の立場に理解を示しつつも、日本で脱石炭の動きが起こることを期待している。

小泉進次郎・環境相とも会って、気候変動問題が極めて深刻であることについて意見交換した。小泉氏は9月に訪れたニューヨークでの気候行動サミットから影響を受けたように見受けられた。私たちが直面している問題が緊急の問題であることを、小泉氏は理解していると思う。

小泉氏からは、日本政府も炭素中立性連合に加盟するとの説明があった。同連合のメンバーになることで、日本には同じく脱炭素化を掲げているほかのメンバー諸国からプレッシャーがかかる。すなわち脱石炭の圧力がより強まることになるのではないか。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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