数に弱い人でも学ばせる「数の女王」の魅力 白雪姫をベースにしたからこそ物語は紡がれた
私事で恐縮だが、「数」が圧倒的に苦手なのである。だから、例えば本を読んでいても、数字、数式、グラフなどが出てくると、途端に読む気を失ってしまったりする。
困ったことだが、人間には得手不得手があるものだと開き直るしかない。さすがに、こればかりはどうしようもないからだ。
しかし、それほど苦手な数字のなかでも、子どものころからちょっと憎めないと感じていた数があった。「素数」である。
それ自身か、あるいは1でしか割り切れない自然数。そんな素直さに欠ける(ように思える)特性にはどこかヒネクレた印象があり、なんとなく憎めないと感じていたのだ。
主観以外のなにものでもないが、そんな思いがあったからこそ『数の女王』(川添 愛 著、東京書籍)には少なからず興味を惹かれた。なぜならこれは、素数をモチーフにしたファンタジー小説だからである。
「数」にまつわる壮大なストーリー
物語の軸となる重要なポイントは、人々と数との関係だ。人々はみな神から「運命数」を授けられているという概念がベースになっているのである。
主人公は、ナジャという名の13歳の女の子。彼女はメルセイン王国の王女だが、母である王妃から愛されることなく、使用人同様の扱いを受けていた。
あるときナジャは、数年前に命を落とした最愛の姉ビアンカが、実は王妃によって呪い殺されたのだという噂を耳にする。そこで真相を突き止めようとするが、その過程で不思議な鏡を手に入れ、導かれるかのように鏡の中へと吸い込まれていく。
鏡の向こうの世界にいたのは、王妃の呪いの手伝いをさせられている妖精たち。ナジャは彼らから、王妃の秘密を知らされることになる。
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