数に弱い人でも学ばせる「数の女王」の魅力 白雪姫をベースにしたからこそ物語は紡がれた
ところで、読みながら気になることがあった。川添氏のバックグラウンドについてである。
本書は前述のような経緯を経て生まれたわけだが、数に関する話題を抵抗なく物語に組み込むためには、相応の数学的知識が必要となるはずだ。
だが私の知る限り、川添氏は言語学者である。そのため「多方面に才能をお持ちなんだなぁ」と感心していたのだが、そういう単純な話でもないようなのだ。なにしろ、「数については初めて勉強することも多かった」と言うのだから。
そのため執筆の過程でも、自分の理解は正しいのか、書き方は不適切でないかとたびたび悩んだのだそうだ。そこで、それらについては多くの専門家に校閲してもらい、多くのプロセスを経て完成させたのである。
積み木を慎重に積み上げていくように作られた本書は、「白雪姫」をベースとしながらも、さまざまな要素を組み込んでいった川添氏の発想力、構成力の集大成だと言える。だからこそ、多くの共感を読んでいるのだろう。
数学への関心と、読書の楽しさを教えてくれる
さて、本書の資料には、「数学が好きでも苦手でも楽しめる傑作ファンタジー! 11歳くらいから大人まで楽しめます」という記述がある。
数学的な部分については完全に理解したとは言えないだけに、私個人としては複雑な心境ではある。が、とはいえ十分に楽しめたことは間違いないので、それはそれでいいのかもしれない。
そもそも難解すぎるわけではないのだから、純粋な気持ちさえあればさらに理解度は深まるだろう。
読んでいるときに何度か、ワクワクしながらページをめくっている子どもの姿を思い浮かべたことがあった。なぜそんなことをイメージしたのかはわからないが、実際のところ、そういう子はきっと少なくないのだろうと思う。
だとすれば彼らにとって本書は、数学への関心を高めるきっかけとなるかもしれない。そして、読書の楽しさを実感させてくれることにもなるはずだ。
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