数に弱い人でも学ばせる「数の女王」の魅力

白雪姫をベースにしたからこそ物語は紡がれた

ネタばらしをするわけにはいかないので、明かすことができるのはここまでだ。それはご理解願いたいが、ともかくストーリーが進行するなかで、数(とくに自然数)に関する話題が取り上げられていく。

まず第1章では約数、素数、合成数が登場し、以後も素因数分解、過剰数、不足数、完全数、友愛数、フィボナッチ数列、フェルマーの小定理、疑素数、カーマイケル数、素数を生成する式、カプレカ数、三角数、巡回数、メルセンヌ数、メルセンヌ素数、ピタゴラス素数、リュカ数列、コラッツの予想が織り交ぜられる。

先述したとおり数に弱いだけに、これらの数に関するトピックスのすべてを理解できたとは言いきることができなかった。だが不思議なのは、そうであるにもかかわらず、すらすらと読めて、楽しむことができたことである。

どうやらそれは、本書が生まれた発端に関係しているようだ。

ベースになっているのは、あの名作

本書の構想は、川添氏が編集者から「プログラミングなどをテーマにした物語を書いてほしい」というオファーを受けたことから始まった。

ところが川添氏はそうしたテーマについて、2016年に刊行した『精霊の箱 チューリングマシンをめぐる冒険』でやり尽くしたと感じていたのだそうだ。

また当然ながら、プログラムやコンピューターといった道具立てを物語世界のなかで魅力的に見せるためには、かなり複雑な設定が必要になるだろうとも思っていた。

にもかかわらず、適切な設定を思いつくことができなかったため、現実問題としてかなりの試行錯誤を繰り返したようなのだ。

だが、次の2つのことが決まると、ようやく全体像が見えてきたという。

一つは、コンピュータのメタファーとして、「白雪姫の鏡」のような道具を使うこと。白雪姫の話はほとんどの人が知っていますし、悪い王妃が鏡に向かって問いかけ、鏡が答えを出すという場面も有名なので、これならば長々と設定を語らなくても読者の方々にすんなり受け入れられると感じました。(332ページより)

そして「白雪姫」のイメージを醸成させていった結果、おのずと登場人物の性格や世界観、物語のテイストも決まっていった。

つまり誰もが知る「白雪姫」がベースになっているからこそ、読者はすんなりと抵抗なく読み進めることができるのだろう。

それからもう一つは、コンピュータが直接扱う対象である「数」を、何か別のもののメタファーとするのではなく、そのままの形で物語の中心に据えることです。(332ページより)

数について調べていった結果、多くの面白い話題を知ることになった。そのため、それらを中心にして物語を組んでいこうと考えていったということだ。

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