部門対立がバカらしくて仕方ない人への処方箋 人間社会ではワンチームという理想は難しい

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ステレオタイプの表現ではありますがオーナー経営者が後継者とおぼしき専務と常務にそれぞれ部門を与えて、2人がいつも競争するように仕向けることで事業を成長させるとともに、社内のパワーバランスをコントロールするという構図は、実際によく見かけられます。そしてこの経営スタイルをとる企業では社会学研究的に言えば必ず部門間対立が発生するわけです。

ちなみにこういった集団心理による対立を簡単に解消する方法があることも知られています。2つの集団に共通のもっと巨大な敵が現れればいいのです。日本人にとっていちばんわかりやすい例は、幕末の薩長連合です。あれだけお互いに忌み嫌っていた薩摩藩と長州藩という2つの集団が討幕に向けてしぶしぶ手を結んだわけですが、そうなった途端、いつの間にか2つの集団は固く結束した同士となっていくのです。

さてこの話には結末があります。私に相談を持ちかけた知人は私の話をそれなりに理解してくれたようです。

新卒と転職組では難易度が違う場合も

それで当初は「部門間対立をなんとかして解消したい」と考えていた彼は、この問題の解決は簡単ではないことを理解して、あっさりと転職することを決めたそうです。転職エージェントには「ワンチームとして顧客のために働く企業文化が強い会社を紹介してほしい」と念をおして転職先を探してもらったといいます。

こういったケースでは新卒でその会社に入った人と、転職者では問題に対抗する難易度が違うようです。新卒の場合、組織同士は仲が悪くても同期のネットワークがあるので、それなりに他部署と交渉したり動かしてくれたりする仲間が存在する。日本企業の古きよき終身雇用時代の武器はそれなりに機能するのです。この会社でも古くからいる社員は部門間対立に直面しながらも自分なりのやり方で部門間の壁を乗り越える努力をしていたといいます。

しかし転職者にはそういった武器がない。そう考えるとあっさりと転職を決めた彼のやり方は、問題解決法としては理にかなったやり方だったのではないかと私も思うのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事