わたしたち霊長類の祖先をさかのぼっていくと信条や主義の違いをもたないアカゲザルの集団同士にも深い対立が存在しているそうです。ほかに何も違いはなく、場合によっては集団間を移動するメンバーもいるというのに、ただ違う集団だというだけの理由でアカゲザルは集団同士で対立する。「これはいったいどういうことなのか?」と番組は問題を投げかけるのです。
人類に近い霊長類としてチンパンジーとボノボがあります。今から700万年前に人類が分かれ、その後、200万年前にチンパンジーとボノボが系統図の中で分化したといわれています。そして興味深いことにボノボだけは、人間やチンパンジーやアカゲザルのような集団同士での対立という習性がないのだといいます。
なぜそうなったのかという理由は、チンパンジーとボノボの分化が起きた原因としてコンゴ川が2つの種の祖先を分け隔てたことにあったと研究者は説明しています。ボノボが進化したコンゴ川の南側は豊かな場所で食料に困ることはなかった。一方でチンパンジーが進化したコンゴ川の北側では日常的に食料が不足しチンパンジーは集団同士でそれを争わなければならなくなった。
集団同士が争うのは「競争」に起源がある
そして悲しいことにサバンナで進化していった人間もつねに食料が不足し、食料をめぐった争いが絶えなかった。集団同士が争う種族の共通点はこの「競争」に起源があるのだというのです。
人間の集団心理について、このことを裏打ちした実験がありました。10代のアメリカ人少年をサマーキャンプに集めて2つの集団に分けて競わせた実験です。2つのチームは同じような母集団から集められた少年たちであったにもかかわらず、サマーキャンプの間、日に日に対立を深め、最終的には暴力的な事件が起きて心理学者は実験を終了せざるをえなくなったそうです。
このように集団間の争いの原因が、人間のDNAに刻みこまれた競争環境にあるのだとすれば、会社の部門同士に仲が悪い例が多いという現象には、経営コンサルタントとしてはおおいに心当たりがあります。経営者の経営スタイルの中で幹部社員同士を競わせるやり方をとる経営者がよくいるのです。
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