清家篤・慶應義塾塾長--危難の時代に大学はどう生き残るか

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 三田(文科系各学部)の南校舎、矢上(理工学部)の研究棟、信濃町(医学部)の古い病棟は、耐震性などの面からも早急な建て替えが必要だ。一貫校についても、中等部や、湘南藤沢中・高等部の環境・施設の質と安全性の向上は重要だ。

新小中一貫校についても中止ではなく開設を延期しただけ。財政の手当てがつき次第、できるだけ早く着手したい。ただ、既存の一貫校の体育館が非常に古い状況のまま、新しい一貫校を造るということはしない。

確かに一貫校を延期するという話になると、いろいろなところに説明に行って納得を得なければならず、しんどい部分はあるが、逃げるわけにはいかない。こういうものは正攻法でやっていくしかない。

福沢諭吉は自伝の中で、借金は怖くてできないと書いている。借金するぐらいなら、貯まるまで待って買えばよいと。われわれもそういう精神でやればいいではないかと思う。

自分の頭で考える人材を育てるのが慶應の使命

--現代のような危難の時代に、大学はどうあるべきでしょうか。

米国の過剰な消費に支えられた、あるいは米国型金融資本主義に翻弄された世界経済の姿は、やはり変わっていくはずだろう。特にリーマンショック以前と以降では世界経済の姿は大きく変わってきている。

もっと大きいのが、人口構造の変化だ。今年の新入生が生まれた時点で高齢者は10人に1人にすぎなかったが、彼らが大学を卒業する頃には4人に1人、40歳代の働き盛りには3人に1人、最終的に彼らが高齢者になるときには5人に2人を占める社会になる。自分の住んでいる足元の人口構造が、ピラミッド型から逆ピラミッド型に180度逆転する中を生きていくことになる。

そういう時代は、従来の物の考え方や行動様式を延長しても、問題は解決しにくい。自分の頭で物を考える能力が大切になる。そこに出てくるのが福沢の言う「実学」だ。

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