清家篤・慶應義塾塾長--危難の時代に大学はどう生き残るか

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 問題は新たな投資、特に建設投資といった量的拡大の部分。これは資金の運用益や、借入金等によって賄わなければならない部分だ。

慶應は08年の創立150周年を記念して、建物の新設や建て替えなど総額900億円を超える事業を行っている。一方で記念募金については当初目標250億円に対し270億円を突破。この分は記念事業を賄える。ただ、残りの600億円超は経常費で賄わなければならない。

授業料や補助金は日々の教育、研究、医療のために振り向けられるべきもの。大きな投資を行う原資としては、寄付金のほか、資金の運用益や借入金を充てるしかない。

運用益については、市況悪化という側面もあるが、今回の教訓から、もう少し手堅い運用をすることに方針を転換したこともあり、従来より縮小しそうだ。従来は1500億円程度を運用し、予算ベースで50億円、調子がよいときは決算ベースで80億円を得ていた。つまり運用利回りは3~4%。当然リスクも取っていた。それを新たな執行部を立ち上げるに際し、もう少しリスクの低い運用に転換した。リターンも控えめになるが、2%台の運用益を目指していく。運用益から新たな投資に振り向ける分は少しペースダウンする。

借入金については、従来、中長期の借り入れを100億円以下に抑えてきた。しかし150周年事業の建設投資もあり、08年度末で177億円まで膨らんでいた。当面は返済額が年25億円程度になり、経常収支を圧迫する。学校法人の経営は学納金と政府からの補助金で成り立っており、授業の対価である学納金を多額の返済に回すことはあまり好ましくない。新たな借り入れは基本的にせず、従来レベルへ早く圧縮したい。

運用益が減り、新規借り入れもしなければ、新たな事業投資を行う速度が鈍るのもやむをえない。その中でわれわれは事業に優先順位をつけたうえで、できるだけ実施していく。

建物に関して言えば、われわれが預かっている学生、生徒、児童、患者さんなどの安全にかかわるものを最優先する。

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