「英語力」は入社後の環境と努力で何とでもなる

留学やTOEICも不要なグローバル企業の実例

松元:社内に英会話クラスを開講する契機は何だったのでしょうか。

長谷川社長:海外との取引が増えていくにつれ、このままではまずいな、と思ったのがきっかけでした。英語力向上そのものを目的としたのではなく、英語を学ぶきっかけ作りとして位置づけていました。

杉森:社員の英語力はどのように伸びていったのですか。

長谷川社長:週1回の英会話のクラスでは完全に話せるようになりません。だから仕事に対して興味を持ってもらい、その仕事の中で英語力を高めることが必要です。英語を使わなくてはいけない状況がないと、一生懸命学ぼうという姿勢は生まれません。スポーツと同様、現場という試合に出るようになり初めて、緊張感の中で自然と実力がついていくのです。

「現場という試合で自然と実力がついていく」と語る、英弘精機の長谷川壽一社長(撮影:佐々木心)

学生記者たちは、英弘精機の社内でスパルタ式か、何か特別なレッスンが行われていることを想定していたが、そうでなかった。社内グローバル化が成功した要因は、英会話クラスを始めとした社員研修だけではなかったのだ。

実践する現場があってこそ、初めて自分のものになる。「やらなくては」という危機感があってこそ、英語の実力がアップする。英弘精機は強制ではなく、社員が英語を自然と勉強する雰囲気を作り出している。

そこで、実際に働いている現場社員の声を知るべく、インタビューした。

「今やらないとマズい」がモチベーションに

最初に話を聞いたのは、入社6年目で海外営業部の男性社員Aさんだ。海外支社の販売・広報支援や製品の不具合への対応、海外支社社員や関係者の来日対応などで、日常的に英語を使っている。同期の社員からも頼りにされるほど英語力が高い。

実はAさんは法学部出身で、大学時代に英語を熱心に学んでいたわけではなく、TOEICを受けたこともなかったと言う。ではどのようにして、実践的な高い英語力を身に付けていったのか。

松元:普段はどのような場面で英語を使われていますか。

A:メールのやり取りや資料の作成などの場面が多いですね。メールは日によりますが、1日必ず10通はやり取りをしています。多いときは30~40通になります。そのほか、取扱説明書のない製品の英文資料を作成したり、海外支社社員が来日したときはその対応をしたりします。トラブル対応の際には、電話やスカイプで会議をすることもあります。

大亀:英会話クラスのほかに個人的にどのような勉強をされていますか。

A:英会話クラスの復習として、授業中に習った使えそうなフレーズを何度も反復し、それを業務の中に活用しています。そのほかオンライン英会話を毎日続けています。1回25分ですが、2年間続けた結果、だいぶコミュニケーションが取れるようになってきたと感じています。オンライン英会話の中で、業務で使う英文資料の添削をしてもらうこともあります。

杉森:精密機器メーカーとして、普通の英語学習にはないような専門用語が多いと思いますが、その習得はどうされていますか。

A:取扱説明書の日本文と英文を照らし合わせて、単語を確認して覚えました。会社から特別な支援があるというわけではなく、どの社員も自分で工夫しながら勉強していると思います。

杉森:かなり勉強されていますが、継続して英語を学習するモチベーションは何でしょうか。

A:とにかく「今やらないとマズい」という気持ちです。業務中に英語を使わなくてはいけない場面が多いので、危機感を持って勉強しています。アウトプットする環境があったからこそ、英語力が定着していったということです。

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