Netflix「嵐」がテレビの限界を象徴する理由 「世界から見た日本」を意識した作品作り

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作り方についてもグローバルスタンダードに基づいています。ノーナレーションかつ画面をテロップで汚しません。テンポ重視でカット割りも多めです。作品を進行していくナレーションや、コメントや状況説明を補足するテロップを事細かに入れる日本のドキュメンタリー作品に慣れた視聴者にとっては多少見づらいものかもしれませんが、海外にも作品を届けたい狙い通りの作りだと思います。

なぜ日本の地上波じゃなかったのか

「嵐×Netflixの理由」を考えるときに、「なぜ日本の地上波じゃなかったのか」という視点からも答えが出せます。

予算の都合で「地上波ではできなかった」という現実的な理由も予想できます。素直に受け止めると納得できる事情でもありますが、言い換えれば、日本のテレビの限界を象徴するもの。これが「嵐×Netflix」の座組から「テレビは終わった」などと揶揄されることにもつながっているのでしょう。

Netflixにて全世界独占配信中の『ARASHI’s Diary -Voyage-』。エピソード数は全20話以上、毎月不定期配信予定(写真:Netflix)

通常の日本の地上波テレビの企画であれば、日本の視聴者向けに作られ、放送され、その後に海外展開が進められていきます。アジア圏だけなど地域が限定され、放送と配信の同時展開の事例もあり、時間をかければ海外展開も広げていくことができます。ただし、全世界を網羅するには今のやり方では不可能だと言い切れます。こうしたことからも選択肢がNetflixに集中したわけです。

アーティスト系のドキュメンタリーが配信でもあふれ、人気ジャンルの1つにもなっています。プラットフォームにとっては新規会員獲得のきっかけを作りやすく助長させています。

記憶に新しいところでは、安室奈美恵さん引退までの1年間を追った密着ドキュメンタリー「Documentary of Namie Amuro “Finally”」はHuluで配信されていました。ライブ映像を収めた単発ものだけでなく、日本ではこうしたシリーズ展開の先駆けです。今春にはX JAPAN YOSHIKIにフォーカスした全6話のドキュメンタリー「Yoshiki -Life of a Japanese Rock Star-」がYouTube Originalsで公開されます。

『ARASHI’s Diary -Voyage-』もテレビファーストではなく、配信ファーストが当たり前の時代を受けたもの。ファンファーストに重きを置いてきた国民的アイドルグループが配信を選択したことで、影響力は十分。日本でも今後、事例が増えていく可能性がある作品として見る価値はあります。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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