大学生は”就職”がすべてですか? キャリア相談 【Vol.28】

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質問者の方は「就職のことを考えると、とにかく不安です」とおっしゃいますが、現時点で何が不安なのでしょうか? 

もしもあなたが、2014年現在の日本で心身ともに健康な東京六大学のひとつの私立大学に通う大学生だとして、数年後に就職できなかったら生命が危ないのでしょうか? 世界の紛争地域や貧困地域と比較するまでもなく、日本におけるリスクは何でしょうか? お考えいただければ幸いです。心配されている就活とは、大学と成績別にスクリーニングされて、見た目がよくて、会社の言うことを聞いてくれそうな人から順番に内定が出るゲームです。ご自分の不安の実態がクリアになりましたでしょうか?

今の大切な時間を無駄にしないでいただければと思います。ビジネスの世界でも近年、価値が高いのはスピード(時間)ですが、学生の時間は何にもまして大切です。勉強でもスポーツでも自分が好きなことをやって、やっただけ吸収できる時期はほかにないからです。

社会に出たら、学生のときよりずっと変数が多く、不条理なことばかりです。就職活動を勝ち抜いて内定をもらい、自分は勝ち組になったと思っても、最初の上司は最低な人間かもしれません。新人を潰すのなんてLINEを送るより簡単です。会社のみんなの前で、「何度言ったらわかるんだ、○○は○○だろう」と怒鳴られれば、周囲からはデキないヤツになります。○○は何でもいいのです、「何度言ったらわかるんだ、ファンキーなのは加藤だろう」でもいいのです。

社会は不条理で、就活で「私の夢は~以下略」と言っていた人でも、普通の人になっていくのです。多くの人は大人になっても井上真央にも浅田真央にもなれませんし、会社には半沢直樹もいません、いるのは普通の人です。半沢直樹はファンタジーだからいいのです。筆者は半沢直樹を見ると、脳内補正でちょんまげをつけて時代劇にします。

若い方には信じられないでしょうが、その昔、大学ではヘルメットを被り、棒を持って暴れていた人たちがいたのです。でもその人たちもちゃんとシステムの中で番号で呼ばれるような普通の人になっています。筆者のようにおじさんやおばさんになると、毎日、普通に生きるのも大変です。男女を問わず同世代と「いやあ、仕事でもプライベートでも普通に生きるのって本当に大変」と日々言っていますので、学生のときぐらい将来の不安さえも抱きしめて好きなように生きてください。

出会った人や、本や、音楽や、情景を、年月を経て思い出すこともあるでしょう。未来のあなたが20歳だったときの自分をいとおしく感じられるようになることを願っています。大人や世の中に期待せずに日々を過ごし、それでも今、長く付き合っていける人に出会えたら幸運です。そんなときに初めて素直になるという能力を使いましょう。

この原稿を書きながら聞いていた「Because」(菅野よう子×手嶌葵)がちょうど終わりました。この曲のやくしまるえつこ氏のジャケットも好きです。学生のときに聞きたかったです。学生っぽさつながりで次は「HARUKAZE」(SCANDAL)を聞きます。早く暖かくなりますように。

※ 塩野さんへのキャリア相談はこちら

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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