既存のシステムに期待してはいけない
さておき、今回のご質問を読んで筆者が最初に感じたのは、「大人に期待するのはやめましょう」ということでした。大人というのは、大人のつくった既存の制度やシステムなども入ります。たとえば質問者の方は「大学はどこも、今、就職のことをいちばんに考慮して授業をしているものなのでしょうか?」とおっしゃいますが、答えとしては「ほぼそのとおり」です。
ざっくり申し上げると、現在の日本の大学では、トップ数パーセントの学術的にも就活的にも「自分の能力をもってすればどこへでも好きなところに行けるだろう」という自信のある人たちと、大多数を占める、親からも大学からも「とにかく大きな安定した会社で正社員になりなさい」と言われている層と、そのほかの漢字の読み書き、四則計算といった社会で生きていくために必要最低限の能力の復習が必要な層に分かれます。
多数を占める「普通の大学」では、大学自体が「就職に強い」や「有名企業・大企業に何人就職したか」で評価されるため、おのずと謎めいたClichéに満ちた「就職に強そうな」学部が新設され、大学はとにかく大企業の正社員をつくろうとします。想像にすぎませんが、質問者の方はこうした風潮に嫌気が差しているのかもしれません。
こうした風潮をつくり出しているのは社会における既存のシステムです。18、19歳を過ぎたら、大人や既存のシステムに期待してはいけません。ちょっとニュースを見れば、年齢を重ねた「偉い人たち」が、子供でも残念だと思うような発言をして炎上しています。人は年齢を重ねてもミネルバのフクロウのように賢くはなりません。世の中の既存のシステムはあなたのためにつくられたわけではないので、受け身で誰かや何かに期待するのは無駄です。
質問者の方に必要なのは、自分で自分を育てることです。大学生という、子供と社会人の中間地点を好きなように後悔ないように使いましょう。学習意欲があるのに、授業がつまらないのだったら、面白そうなほかの授業に潜ればいいですし、他大の授業に潜ることだってできるでしょう。今ではインターネットで海外の一流大学の授業も聞けます。大学には普通、巨大な知の集積である、図書館というものがありますので、いくらでも使ってください。
今の大学が嫌すぎて死にそうなら、その大学の留学制度を使って海外の大学に行ってはどうでしょうか? 通常は奨学金もついているので、出費も抑えることができます。筆者がある大学教授から聞いた話では、留学制度があっても使われないものが多く、もったいない、とのことでしたので、試してみる価値はあるでしょう。今の場所でくすぶっているくらいなら、後のことは気にせず日本を出てみましょう。
世の中は「もっと笑顔で頑張ろうぜ」みたいな意識の高い人だけで構成されているわけではありませんし、筆者のようにメロウで暗い人間もたくさんいると思います。大学にも行かず、だらだらと自堕落に過ごせるのも、今だけの文学的経験でしょうし、「あ、今日は海、見たいな」とか思って、そのまま電車をずうっと乗っていけるのも今だけでしょう。今はSNSで四六時中、誰かとつながっていますが、独りで何かをしたり、何もしないのも大切です。人は独りの時間がないと成長しないですし、特にリーダーになるような人間に孤独は必要です。
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