では、中央銀行、とりわけ日本銀行の量的緩和により国債バブルが極限まで膨らみ、ついに崩壊するのだろうか。それでもない。確かに、もっとも膨らんでおり、異常であり、前代未聞であり、金融市場と実体経済に最も大きな打撃を与えるのは、国債バブルの崩壊である。しかし、重大で巨大なバブルである一方、だからこそ、このバブルはしぶとい。なかなか崩壊しない。
ヘッジファンドは日本国債の売り仕掛けをやめた
1990年代後半以降、海外のヘッジファンドは日本国債の暴落は必至とみて、空売りを何度も仕掛けてきた。日本銀行がゼロ金利を採用した2000年以降、そして量的緩和の始まった2001年以降は、日本銀行自らが最大の買い手に回る日本国債バブルを膨らませてきたが、これに対してヘッジファンドは悲惨なまでに売り負けてきた。返り討ちにあって、彼らは大きな損失を出して退散していった。彼らが、ポジションを清算し、買い戻しを余儀なくされ、日本国債はさらに値上がりしていった。黒田東彦日銀総裁の異次元緩和という異常な緩和が始まってからは、彼らはついに学習し、一緒に買うことにした。バブルに乗ることにしたのである。
中央銀行が最後の買い手になっているバブル。これは崩壊しにくい。なぜなら、中央銀行は儲けるために買っているわけではないから、暴落懸念が出たときに売り逃げるどころか、その時こそ暴落を阻止するために買いまくるからである。暴落懸念で売りが殺到することでしかバブルは崩壊しないのだから、これではバブルは永遠に崩壊しない。
崩壊するのは中央銀行がつぶれたとき、あるいは彼らの使命が変わった時で、日本国債よりも日本経済を守るべきであると気づいたときに、あるいはそう行動することが許されたときに、国債を買うのをやめる。その時初めてバブルは崩壊するのだ。ふつうは、一国の中央銀行よりも世界中のトレーダーの方が強いのであるが、アメリカと日本、そして中国は例外である。
一方で、ソフトバンクグループの投資先の一つである、シェアオフィス大手のウィーワークの親会社、ウィーカンパニーの破綻の可能性が指摘されている。この企業は、ユニコーン(すなわち上場前に10億ドルの企業価値を持った世界の企業群)のトップを走っている、とされていた。ところが、上場直前になって上場を延期し、それにとどまらず市場での信用リスクまで言及されるようになっている。事実上救済が必要となり、ソフトバンクグループが約1兆円を突っ込んで最大の株主となり、再建を主導することとなった。「ソフトバンクグループのバブル崩壊」が始まったと言えるのではないか。
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