彼らは、なぜウィーワークに群がったか。バブルだったからである。バブルでは馬鹿になって、合理性を捨てて群がることが勝利の法則である。しかし、ここではバブルに簡単に参入できなかった。上場していなかったからである。ニューマン氏に新たに株を売ってもらわなくてはいけない。増資するか、彼の持ち分を売ってもらうかしないといけない。そして、この売り出しに、ファンドやウォールストリートの一流金融機関は群がったのである。
売り出すたびに、価格は切り上げられていった。バブルだからである。後から来るものはより高い入場料を支払わないといけない。そして最後にバカ高い入場料を払ったのがソフトバンクグループではなかったか。これはウォールストリートやシリコンバレーのファンドは(中国のファンドも)嫌がるはずだったが、ソフトバンクグループを嫌いながらも甘受した。なぜなら、同社が高い価格で出資または買えば、時価が上がり、自分たちの保有する株式に高い時価が付き、ファンドに含み益が生じ、それが客観性を持つようになるからである。
しかし、彼らは、最後はどうなると思っていたのか。そんな高い価格に吊り上げるゲームが持続できると思っていたのか。ソフトバンクグループのさらに後から来る大バカ者、クレイジーな投資家がいると思ったのだろうか。いた。いると思っていた。それが上場である。公開時に株を買ってくれる一般の個人投資家である。
上場が延期になると一気に厳しい状況が目の前に
しかし、個人投資家はそれほど甘くなかった。いや、上場のプロセスはまだ常識を残していた。客観的にウィーワークの業績をチェックすると、6兆円とも7兆円とも言われていた企業価値は幻で、せいぜいゼロ円、素直に査定すれば赤字が膨らむ一方であるからマイナスの価値しか生まないのではないか、などと指摘されたからである。
さらに、彼らは資金繰りに問題を抱えていた。だから早めに上場を決断せざるをえなかったのである。ニューマン氏にとっても楽しい非上場でのバブルゲームを終える時が迫られていたのである。しかし、上場が延期になると一気に資金の問題が目の前に迫ってきた。そこで、ようやくガバナンスが効き始めたのである。
初めてニューマン氏は企業の支配権を手放し、ソフトバンクグループがそれを入手したのである。ガバナンスも滅茶苦茶であったのは、報道されている通りだが(ニューマン氏が議決権を支配し、親族やあらゆる仲間たちにカネを流出させていたなど)、なぜそれを一流のベテラン投資家たちが放置していたのか。
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