2020年、意外なところからバブル崩壊は始まる ウォールストリートの一部も巻き込まれる?

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その理由は簡単だ。バブルだと認識していたからである。バブルに乗るには理屈は言っていられない。ニューマン氏に気に入られて、バブルゲーム参入チケットを分けてもらわないといけない。だから、老獪なベテラン投資家たちは、ニューマン氏の言いなりになってしまったのである。

ニューマン氏もそれを知って、彼らを競わせた。「自分の言うことを聞かなければ株は分けてやらないぞ」、と。都合がいいことに、中国のファンド、日本のファンドという新参者が興奮していた。老獪な投資家たちは、彼ら初心者が荒っぽいことを知っていたから、仲間内だけなら、自分たちが結束して、ニューマン氏に譲歩させたはずだが、それができず、奪い合いに参加した。だからバブルは膨らんでいったのである。

ここに起業家が「起業している」という独占的な地位を利用して、わざと上場を遅らせた。だからユニコーンという不思議な上場しない巨大新興企業が生まれたのである、起業家にとっては、取引所という頭の固い、バブルに興味のない人々のチェックを受けずにバブルを煽ることができる。そのバブルに乗ったファンドも後で上場時により馬鹿な投資家に売りつけることができるから、馬鹿のふりをしてバブルゲームに興じていた。

バブルゲームは終わった

このバブルゲームが事実上ウィーワークで終わったのである。ウーバーはなんとか上場できた。こちらは上場もできなかった。残っているユニコーンはほとんどすべて衰退していくだろう。少なくとも、赤字に見合った企業価値に評価が下がっていくだろう。そうなると誰も引き取る人はいないから、多くの企業、特に大きな未上場新興企業は行き詰っていくだろう。このように、ソフトバンクグループの試練は、シリコンバレーの一部を困難な状況に追い込み、ウォールストリートの一部も巻き込まれるのではないか。

これが2020年のバブル崩壊だ。そうなれば、普通の株式市場も盛り上がることは難しいだろう。だから、株式バブルはこれで終わる。不動産も同じだ。低金利で無理して投資している投資家も行き詰まるか、少なくとも苦境に陥るだろう。

実はソフトバンクグループは、まだアリババの含み益などがある。だから、バブル崩壊のきっかけはソフトバンクの周辺なのに、アメリカの中心の金融市場のバブルが崩壊するということがおこりうる。なぜなら、ソフトバンクグループや他の買い手が積極的に買わなければ、彼らは参加したバブルゲームから、投資した資金の大半を諦めて、撤退しなければいけないからである。

2020年、良いお年をお迎えください。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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