2つ目は2008年のリーマンショックだ。その後に中国の西方シフトには拍車がかかり、中国は四川省や甘粛省、新疆ウイグル自治区など西部地域のインフラ整備を大規模に進めた。
最後が2014年のウクライナ危機だ。クリミア半島に侵攻したロシアに対して西側が制裁を加えたことで、欧州とロシアの関係は複雑化した。中東欧諸国はロシアとの関係を見直す一方で中国との関係を強化した。これにより生まれたのが、中東欧の16カ国と中国の首脳会談である「16プラス1」だ。
アジアと欧州をつなぐインフラはこれまでシベリア鉄道しかなかったが、中国により鉄道網の整備が進んだ。さらに中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)のような新しいタイプの国際金融機関の登場により、欧州とアジアの関係がより近くなった。
中ロは平等ではなく上下の関係
──中ロの接近もユーラシアの再連結を後押ししています。
ウクライナ危機で孤立したロシアは中国との関係緊密化に動き始めた。ただし中ロは平等ではなく上下の関係だ。西側との関係の悪化や経済的な補完関係、対米戦略の一致などで結び付いているが、ソ連崩壊時は中国と同水準だったロシアのGDPは今や中国の6分の1しかない。ロシアは中国に軍事技術面でも協力しており、この不平等なタッグは世界の戦略環境に大きな影響を及ぼしている。
日本には日ロの緊密化で中国とのバランスを取ろうと考えている人もいるようだが、効果があるか疑問だ。ロシアは弱すぎるからだ。
──ユーラシアの台頭は国際秩序をどう変えますか?
第2次世界大戦後にアメリカ主導で作られたブレトンウッズ体制など現行の国際秩序は、ルールをベースにしたものだ。これに対して中国が目指すのは、多国間のルールによらず、2国間の交渉で国際問題を解決するという仕組みだ。
中国はお互いの内政には干渉せず、ウィンウィンの関係で多元的な秩序を作ろうという方向に進んでいる。その先にあるのは、緩やかな地域覇権からなる分権化された国際社会だろう。
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