彼が「がんは天罰」と受け止めた理由
2014年11月、金澤雄太さん(当時32歳)は、盲腸の手術で切除した部分にがんが見つかった。なぜ、自分はがんになったのか。約3カ月間の入院中に自問自答するなか、金澤さんに思い浮かんだのは「天罰」の2文字だった。「天罰」とがんにどんな関係があるのか。彼の説明はこうだ。
当時の金澤さんは管理職2年目。個人の業績を上げつつ、チーム全体の業績向上にも責任を持つ、プレーイング・マネジャーだったという。
「しかし、当時の私は個人業務よりも、部下への助言や指導を優先し、チームの業績向上に集中することが、管理職である自分の仕事だと考え違いをしていました。お恥ずかしい話ですが、楽をしてしまったんです」
今はプレーイング・マネージャーを置かず、管理職は管理職業務に専念すべきという会社が多い。だが、金澤さんの会社は、専門職や管理職の人材を対象とする企業の採用支援が主要業務。そのために課長職クラスは管理業務に加えて、個人の数値目標を持つ。人材紹介業界の特徴だという。
また、盲腸の手術での入院前、彼は別チームの管理職からこう耳打ちされた。
「『金澤さんの部下数人が、あなた抜きでミーティングの予定を立てているようだよ』と言われました。聞いたときは恥ずかしかったし、悲しかったです。それをほかの管理職から聞かされたのもショックでしたね」(金澤さん)
個人の業務をおざなりにして、上から目線の管理職然として振る舞っていたことが、一部の部下たちの離反を招いたと彼は直感した。
もちろん、彼の管理職としての行動と、がんに直接の因果関係はない。だが入院後、がんになった理由を考えあぐねた金澤さんが思い至った、「天罰」の理由がそれだった。彼の人となりがうかがえるエピソードだ。
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