がんになった37歳が営業で"MVP"を獲れた理由 「がんは天罰」とまで思った日からの"再起"

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金澤さんは、自宅での療養中も先の部内報を作り続け、1年間で8号を発行。2018年5月、彼は満を持して3度目の復職を迎える。

「私の分まで頑張ってほしい」と託す感覚

部内報作りを通して金澤さんの意識も変わった。若手の強い顧客志向に触れて、お客様起点で採用や転職を支援する大切さが身にしみたと話す。

「2018年の復職以降、私が担当する転職希望者には、紹介企業が外部人材を必要とする理由や、その要件に相手がどのように合致しているのかを伝えています。さらに必要があると判断すれば、企業のネガティブな面なども、私はできるだけ率直に伝えるように心がけています」(金澤さん)

彼は40代、50代男性の支援事例が多い。その世代の仕事への本気度や、人生で背負っているものの多さに、個人的に共感する部分が大きいという。

「私の分まで頑張ってほしい、と託す気持ちも強いんです」(金澤さん)

月間MVPを受賞しスピーチをする金澤さん(写真:金澤さん提供)

2018年11月、彼は月間MVPを受賞。東日本地区500人中1番の成約数を記録した。授賞式での彼のスピーチを一部紹介する。

「(前略)Yさん(会社の上司)、4年前、僕が虫垂(盲腸から垂れ下がった突起状の部位)がんの告知を受けて、入院先の病院からお電話した際に、『待っているから、必ず戻ってこい』と言ってくださり、ありがとうございました。あの言葉があったから、今日この場に立つことができました。(中略)

Oさんをはじめとするメディアベンチャーチーム(金澤さんの所属する部署名)の皆さん。休職するたびにクライアントを代理対応くださり、戻ってくるたびに嫌な顔もせずに迎えてくださり、ありがとうございます。皆さんのおかげで僕は今日、こうして賞をいただくことができました」

金澤さんの「お客様起点」の仕事術は、上記のような上司や同僚に支えられている。かつて「ゆがんだプライド」に空回りしていた頃の面影はもうない。

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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