ソフトバンクでの経験、自社に戻ってきてからの改革
大学卒業後の進路では、社会人としての経験や学びを得て2~3年で自社に戻ることを前提に、知人の勧めによりソフトバンク株式会社に入社した。
当時、成長著しかったIT業界の意思決定のスピードの早さや、個人に裁量権のあるソフトバンクの企業文化に大きな影響を受けたという。
特に外部環境の変化に適応した組織作りは、自社に戻ったときのことを意識し、どうにか応用したいと考えていた。
湧永は、ソフトバンクで営業を2年ほど経験した後、湧永製薬に取締役として戻ることになる。26歳のときだった。国内営業副本部長となった湧永は、自社の営業方法を知るために営業の現場に足を運び、ある改革に着手した。
当時の湧永製薬では流通在庫(注)を重視した営業の慣習がとられていたが、それでは販売店にも、メーカーにも明日はないと考え、そのような慣習を店頭在庫の消化を重視するものに切り替えようとした。
この改革の裏には、創業以来の、1店舗1店舗において一人ひとりの健康状態に合ったカウンセリングを重視した販売スタイルをもっと伸ばしていきたいという思いもあったという。
改革に着手すると、皆彼の考えや言葉には賛成、賛同するものの、実際にはなかなか行動に変化は見られず、翌年にはより多くの流通在庫を抱えるという苦い経験をする。
湧永は、改革を実行する、志を実現するには、言葉だけではだめで、仕組みや制度そのものを変えていかなければ、人の行動は変わらない、それも一度に180度の変化は成し得ないので、少しずつ着実にやっていくことが必要なのだということを、頭だけでなく体で理解したという。
また自分が本当に何かを成し遂げたいと考えたとき、実現したいことの裏側に潜む部分(この改革でいえば流通在庫重視という営業慣習)に切り込む勇気や手段が必要だと感じた。
改革実行の難しさを実感していた湧永は、人や組織のマネジメントなど経営の知識を体系的に身につけたいと考え、グロービス・マネジメント・スクールで学び始めた。
なんとなく理解していたことを体系的に理解することで、改革のスピードも速まり、学ぶことが非常に楽しかったと湧永は振り返る。
注:小売は、売れ筋商品の品切れや過剰在庫の防止のため、メーカー側の在庫ではなく、即納可能な途中の卸売業に在庫があることを望むことが多い。流通経路が長くなると、流通在庫が増加するだけではなく、実際の需要よりも多く伝えられ、さらに在庫を抱えるという事態を引き起こす。
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