第4回 湧永製薬株式会社社長・湧永寛仁 志の醸成

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専務、副社長を経て、社長就任へ

営業改革の次には、湧永製薬の強みをより一層伸ばすべく、選択と集中に踏み切った。
 湧永が考える湧永製薬の強みとは、キヨーレオピンを中心とする予防の概念の上に立つ医薬品の開発であり、市場においてはニッチャー(小さい市場規模の特定の領域で独自の地位を築いている企業)としての価値を最大化したいと考えた。
 当時、多岐に渡っていた研究テーマや製品開発テーマを見直し、主力製品の研究開発に集中させたのだ。

そして2007年、34歳でいよいよ社長に就任する。その当時のことを湧永はこう振り返る。
 「社長就任は21歳から考えていたことなので、心境としては落ち着いていました。しかし、広島事業所で約250人の社員を前に社長就任後初めてのスピーチをしたときに、自然と涙がこぼれてしまい……いろいろと湧きあがるものがあったのかもしれないですね」

 社長就任後は、後に示す「志」を実現するために、会社を筋肉質にすることに地道に取り組んでいる。まずは、品質異常が発生した場合でも迅速な対応が可能となるトレーサビリティ(物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態にすること)のシステムを導入した。また、人事制度や予算管理業務の改革にも着手した。

湧永は、社長就任と同時に、数年前から通っていたグロービスが新設したグロービス経営大学院(MBA)に入学し、より深く経営を学び始めた。
 グロービスでの学びは、経営の手法だけでなく、実際の経営の現場での工夫や苦労をいろいろな企業や立場の人と分かち合える場として、そして自らの志を研ぎ澄ます場として、貴重だと感じていた。
 社長として多忙を極めながらも、学びと両立させることはそれほど苦ではなかったという。自分が学び成長し新たな発見をしていくことで、経営に反映できるのが楽しい、また自分の成長は会社や社員に対しての義務だと湧永は考えたからだ。

▼田久保の視点
湧永は将来の経営者が約束された中でも、そして経営者になった今でも、自らの力が足りない部分を認識し、貪欲に学ぶ姿勢を貫いている。謙虚な姿勢を保ち、トップ自らが学ぶ姿勢を崩さないことが、湧永製薬の会社で働く社員に良い影響を与えているであろうことは想像に難くない。もし、読者の皆さんが環境変化に対応できる「学習する組織」を創りたいなら、まずトップ、そしてリーダー自らが学ぶことが大切だということを理解していただきたいと思う。

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