「PISA読解力低下」は子どもたちからのSOS 日本の教育のために大人が気づくべきこと
語彙ってなんだろう、語彙ってどうやって身に付ければよいのだろう――そのことを、次のような文で考えてみましょう。
すっと、まさに自然に読める人と、「漢字多めで嫌だな」という印象を持つ人に分かれるでしょう。見た瞬間に「無理!!」と諦める層が(リーディングスキルテスト(RST)の結果から考えると)、国民の25%くらいいてもおかしくありません。
改めて読んでみましょう。
江戸、当時、最大級、都市、出世、有利、寺子屋、普及、際立つ、識字率
といった語が並んでいます。これらを知らないと、この文を「読んでわかる」ことは難しい。「辞書で調べればいいじゃないか」と思うかもしれません。では、試しに『広辞苑』で「寺子屋」を引いてみましょう。
おおっと!「学制公布」とか「庶民」とか「世俗的」など、「寺子屋」よりも難しい言葉が出てきてしまいました。慌てて、それらの言葉を調べると、さらに難しい言葉が出てきます。辞書を引くことで、「文を理解する」ことが助けられるどころか、かえって大変になる、という笑えない現実があるわけです(小中学生向けの辞書でも、あまり状況は変わりません)。
「印籠」を知らない子どもたち
実は、辞書というものは、辞書に載っている語彙の大半を日常的に使うことができる人が、たまに出合う未知の語の意味を調べたり、正確な定義を改めて知りたいときに使う道具にすぎないのです。アメリカ等で行われた先行研究では、使われている語彙の95~98%を知らないと、文章を理解することは難しいということがわかっています。
では、私たちはどこで語彙を獲得しているかというと、基本的には、身近な環境から、です。生まれ落ちたときから、親や身近な年長者(保育園の年長の子や親族、近所の人たち)の会話、加えて、テレビなどから音として言葉が入ってくるのです。
そのことを象徴する語として私が注目しているのが「印籠」です。江戸時代に広まった薬などを入れて腰に下げる携帯用の容器ですが、30代で「印籠って何?」という人は少数派でしょう。40代以上はほとんどが知っている言葉に違いありません。
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