AI時代を生き抜く教育のカギとなる「読解力」 板橋区から見えた、学校現場「変化」の兆し

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18年11月に行われた「リーディングスキルフォーラム」でモデル授業を行う新井紀子氏(撮影:尾形文繁)
次の2つの文が表す内容は、「同じ」だろうか、「異なる」だろうか。
「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」
「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」
当然、「異なる」が正解だ。しかし全国の中学生857人の正答率は、なんと57%。「2択問題」の正答率はあてずっぽうでも50%になることを考えれば、驚異的な低さだ。
このような「教科書が読めない子どもたち」の問題を提起したのが、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者、国立情報学研究所の新井紀子氏だ。
TBSテレビの阿部俊輔記者は、新井氏の研究活動を長期にわたって取材してきたという。同局「報道特集」の大型特集「AI時代を生き抜く教育」(2月9日放送)では、新井氏の活動も取り上げ、大きな話題を呼んだ。
特集の舞台のひとつとなったのが、子どもたちの読解力向上という課題に真正面から向き合い、具体的な取り組みを始めた都内の小学校。教育現場の最前線を、阿部記者にリポートしてもらった。

「教科書が読めない子ども」問題に自治体が動き始めた

教科書や新聞の文章をもとに基礎的な読解力を測る「リーディングスキルテスト」の結果、中学生・高校生の多くが「教科書を読めていない」という実態が明らかになりました。新井紀子さんの著書『AI vs.教科書の読めない子どもたち』により、教育現場で危機感が共有され、リーディングスキルテストを取り入れる自治体が増えています。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は25万部のベストセラーになっている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「報道特集」で取り上げた東京都板橋区もその1つです。板橋区では2018年6月と7月、試験的に公立の小学6年生と中学生全員に「リーディングスキルテスト」を実施しました。

板橋区教育委員会の中川修一教育長はこう話します。

「学力テストとの関連が非常に強いことがわかってきた。リーディングスキルを高めることが、学力定着向上にもつながるし、これからの社会を生き抜くために必要だと手ごたえを感じた」

板橋区は2019年度から本格的にリーディングスキルテストを導入することを決め、「読み解く力」の育成を教育政策の柱とすることにしました。すべての区立小中学校でテストを実施するという試みは、都内では初めてのことです。

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