AI時代を生き抜く教育のカギとなる「読解力」 板橋区から見えた、学校現場「変化」の兆し

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「読解力」を高めるためにどうしたらいいのでしょうか。板橋区では2018年10月から新井さんを招き、研究活動を始めました。

その初回、公立の小学4年生に対し、新井さんが自ら考案した「読解力を高める」国語の授業を披露することになりました。新井さんが「小学生」に授業をするのは、この日が初めてだといいます。教室には、子どもたちとほぼ同じ人数の大人たち、近隣の小中学校の教師や校長、区の教育委員会らが囲んで、授業を見つめます。授業の様子は撮影され、隣の教室でも見ることができるようにスクリーンも設けられました。

授業は「オセロを使って、実況中継をしてみよう」というもの。2018年11月のリーディングスキルフォーラムで新井さんが披露したものと同じです。授業の詳しい内容は、東洋経済オンラインの記事で紹介されています。

「オセロの並べ方を説明するために必要な言葉を理解し、それに基づいて並べ替えることができる」「情報を関連づける言葉に着目することができ、必要な言葉を用いて、相手に一意に伝える文章を書くことができる」ことを目標にしています。

授業では「実況中継」「交互」「一意」という言葉が出てきます。特に「一意」というのは小学校では普段使わない言葉です。

新しい言葉が出てきたときには、その定義を説明します。新井さんは新しい言葉を使うときには、「何々とは、何々ということ」と説明し、子どもたちに意識、注目させます。板書でも次のように記して、定義を強調します。

※実況中継とは、「起きていることを見ていない人やくわしくない人にもわかりやすく伝えること」
※交互とは、「ひとつおき、たがいちがいに」
※一意とは、「答えが一つに決まること」

なぜ「定義」が大切なのか

授業の後、小学校の体育館で新井さんと教師らが参加して、協議会が開かれました。

そこで新井さんは「定義を理解すること」の重要性を語りました。

「定義を読むことが小学6年生、中学生、高校生を通じて最も難しい。しっかり言葉を入れてあげないと、なんとはなしに言葉を使う。雰囲気で使う。(そういう小学生は)中学の数学、理科で大きくつまずく」

新井さんがリーディングスキルテストを作るにあたって、小学校と中学校の教科書を集め、調べたところ、中学1年生になると小学5,6年生に比べて、定義の文が急激に増えるというのです。指導要領では小学6年生までに定義の文を読めることが前提になっているとして、小学生のうちに定義を読めるようにすることが大事だと訴えます。

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