AI時代を生き抜く教育のカギとなる「読解力」 板橋区から見えた、学校現場「変化」の兆し
協議会では、新井さんの授業を見た教師らが、「リーディングスキルテスト」の観点を入れて、日々の授業をどう改善することができるか、議論が行われました。
次の研究活動。板橋区の小学4年生担任の教師が自ら授業を考え、提案することになりました。授業を行う際には、教師は「指導案」というものを作ります。授業の流れや予想される児童の反応、指導上の留意点などを記します。そこに「読み解く力の育成を踏まえた指導ポイント」が加わりました。
「指導案」の作成にあたっては、担任教師が教育委員会の担当者、校長、副校長らと「指導案検討」の会議が行われました。そこで出たのは、「読解力」を意識して授業することの大切さです。授業をすることになった教師はこう話します。
「(これまで)勉強のなかで意識していなかったから、読解力が足りなくなってきた。国語でも算数でもない、読み解く時間という『教科』があってもいいと思う。それくらい意識して授業をしたほうがいいのではと思う」
読解することを意識させるために、子どもたちにこう話しているといいます。
「読み解くというのは欲しい情報を取ること、読むというのはただ字を追うだけだよねと。読み解くと読むは全然違う」
2018年11月、新井さんや近隣の教師らを前に、この教師による国語の授業が行われました。授業は国語、接続詞の「だから」と「しかし」を正しく理解して、使えるようにするというものです。
「雨が降りそうだ。□、傘を持っていかない。」
次の□に、「だから」と「しかし」が入りますか。
子どもたちは、最初の文に「だから」、次の文に「しかし」を入れて読むことができました。
「なぜ」を問うことの重要性
「ここからが大事な学習です。なぜ、いま最初の文に『だから』を入れたのか。前の文と後ろの文の関係を考えて、ノートに理由を書いてください」
教師はそういい、子どもたち1人ひとりに考えさせ、文章にしてノートに書かせます。
子どもたちからあがってきたのは、こんな理由でした。
「『だから』を、なぜ入れたかというと、次の言葉につなぎやすい」
「『だから』を使うのは、その状況に合っているから」
「『だから』じゃないと……、『しかし』を入れると文にならない。変な文になる」
子どもたちから一通り発言が出たあと、教師はこういいました。
「なんとなく使っていることを、きちっと考えようという学習。ここできちっと学習できたら正しく使い分けることができるよね」
ここで初めて教科書を開きます。教科書に書かれている「だから」の説明を子どもたちは読みます。
こだわったのは、「だから」と「しかし」を正しく理解して、使えるようになることです。
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