「PISA読解力低下」は子どもたちからのSOS 日本の教育のために大人が気づくべきこと

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
日本の子どもたちの読解力が低下しているといいますが、そもそも「読める」とはどういうことでしょうか?(Fast&Slow/PIXTA)
先日発表された国際学習到達度調査(PISA)で、日本の「読解力」の順位が前回の8位から15位に下がったことが話題となっている。メディアは「読解力」急落を一斉に報じたが、内容を見ると、一口に「読解力」と言っても論者によってさまざまな解釈があった。
基礎的読解力を調査するための「リーディングスキルテスト」を開発した新井紀子・国立情報学研究所教授は、「PISAは全世界で同時に調査を行うため、文化に依存する価値観や主人公の心情や著者の意図などは問わない。PISAの読解力や書く力を議論するときには、日本の国語科の伝統的な読解力と区別しないと議論が混乱することに注意すべき」という。
では、国際社会で活躍するうえで必要な「読解力」とはどのようなものだろうか。また、子どもたちを取り巻く言語環境にどのような変化が起こっているのだろうか。新井紀子氏の新刊『AIに負けない子どもを育てる』から一部抜粋・編集してお届けする。

正しく「読む」ために必要なこと

「読む」という動詞は、「言う」や「行く」に比べれば使う頻度が低いかもしれません。

『AIに負けない子どもを育てる』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ですが、「話す」や「歩く」と同じように、誰もがふつうに使う代表的な動詞でしょう。では、改めて「読めるって、どういうこと?」と尋ねられたら、あなたはなんと答えますか。

まず思いつくのは、ひらがな・カタカナ・基本的な漢字を、「文字として読める」ことでしょう。いわゆる「識字」です。江戸が当時世界最大級の商業都市で、「読み書きそろばん」が就職や出世に有利だったことや寺子屋の普及などにより、日本は200年前から際立って識字率が高い国です

けれども、字が読めるだけでは、文章を「読める」といえるわけではありません。

識字に加えて何があれば「読める」のでしょうか。次に思いつくのは語彙でしょう。漢字検定や語彙検定の受検を親や学校が盛んに後押ししてきたのも、「漢字が読めて、語彙が豊富になれば、『自然に』読めるようになる」という信念によるものだと思います。

次ページ語彙はどこで身につけられるのか?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事