田辺三菱製薬「デパス」製造者の知られざる歩み

吉富製薬が始祖、後発薬台頭にも耐えてきた

もっとも別の営業担当社員の場合は、今でも現場でデパスのことについて時々耳にすることはあると語る。

「医師や薬剤師からデパスの依存性の危険について、もう少し情報提供すべきとの指摘を受けることはたまにあります。そのためか今注力しているSSRIの特徴を伝えるために、医療従事者向けに説明会や講演会が開催した際に、デパスのようなベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性の危険について同時に説明が行われている事例もあるのは承知しています」

一方、約20人の精神科医に田辺三菱製薬の対応について尋ねたが、ほぼ異口同音に最近は同社社員がデパスについて情報提供してきた経験はほとんどないと話す。さらにそのうちの複数の精神科医が「依存性の問題があるデパスについて、もはや先生方に悪く言われても仕方がありませんし、そのような発言をお止めしません」と社員から言われたことがあると証言した。

現在、デパスの依存性の問題について同社が医療従事者にどのような情報提供や対処を行っているのか? 田辺三菱製薬に取材を申し込んだが、広報部の返答は次のようなものだった。

田辺三菱製薬は取材拒否

「社内で検討の結果、抗精神病薬の不適切な使用を一般の方が知って悪用につながる恐れがあること、また現在治療中の患者さんが独断で治療を中止する恐れがあるため、今回の取材はご遠慮させていただきたいと思います」

これまで田辺三菱製薬の決算発表時に提供される補足資料には、主要製品別売上高としてデパスも必ず掲載されていたが、2018年度からはそれも消えた。すでに推定では同社総売上高(2018年度実績4247億円)の1%にも満たないと考えられる。

もちろん現在でも、もし医療従事者がデパスに関する情報提供を求めれば、同社は対応するであろうし、製薬企業の責務を放棄したと言うつもりもない。ただ、同社の中でその存在感が大きく低下していることは売り上げ実績や社員の証言などからも強くうかがえる。にもかかわらず、裾野の広い処方が行われ、いまも依存の実態が継続しているというのは何とも皮肉な現実である。

(取材・執筆:村上 和巳/ジャーナリスト)

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(第6回に続く)

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