社会経済的ステータスは「居住地」次第で変わる 人からの「影響」を断つのは愚策でしかない
個人主義の現代では、「環境は自分から切り離されて存在する、自分とは別のものだ」と考える風潮がある。しかし、心理学者のティモシー・ウィルソンはこう話す。
「人の行動は、その人の性格や考え方から来るものだと思われている。拾った財布を持ち主に返すのは『正直』だから。ゴミをリサイクルに出すのは『環境を気遣っている』から。カフェラテに5ドルも払うのは『高いコーヒーが好き』だから。
しかし、多くの場合、それは周囲からのかすかなプレッシャーによって形作られている。けれども、私たちは、プレッシャーがかかっていることに気づかない。だから、自分の行動は自分の内側からやってきたものだと勘違いする」
社会的通念は、個人の欲求よりもずっと強力に、人の行動をコントロールする。そして、これまでの人類史研究やサイエンス研究をたどっていくと、このプレッシャーをもたらす環境は「状況」「場所」「人間関係」に大きく大別されることが見えてくる。
世界的な大歴史家が出した「シンプルな答え」
歴史家のウィリアム・デュラントは、40年にわたって世界の歴史を研究し、その成果を11巻の書物に記録した大家だ。ここには人類が生まれてからの歴史がすべて網羅されており、デュラントは、人類史を決定づけた瞬間を取り上げただけでなく、世界で最も偉大かつ影響力を持った人たちについても研究した。
膨大な年月をかけて研究し、慎重に資料を読み込んだ結果、デュラントはある結論にたどり着く。歴史とは、偉人たちによって作られるものではない、と。実は歴史とは、「偉大な人物」によって作られるものではなく、「困難な状況」によって作られる――これがデュラントの結論だった。
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