社会経済的ステータスは「居住地」次第で変わる

人からの「影響」を断つのは愚策でしかない

それでは、他人とのつながりを絶って影響を弱めたほうがいいのかと問われると、決してそうではない。事実、他人との健全な関わりが人間のパフォーマンスを引き上げることは、数多くの研究で報告されている。

一方で、現代社会はテクノロジーの面では人とつながりやすくなっているのに、実際には関係性は希薄になっているというジレンマに陥っている。環境問題専門家のビル・マッキベンは、「私たちは隣人がいない生活スタイルを発達させてきた。50年前に比べ、家族や友人と一緒に食事をする機会が平均で半減し、親しい友人の数も同様に半減している」と述べている。

しかし、人とのつながりを見直すべき科学的根拠は確かに存在する。心理学者マーシャル・デューク博士とロビン・フィバッシュ博士が行った調査では、家族の歴史を知ることの大きな影響について言及されている。

ことの発端は、心理学者でデューク博士の妻だったサラ氏が話した「自分の家族についてよく知っている子どもたちは、困難に直面したときうまく対処できる傾向がある」というエピソードだった。

デューク博士とフィバッシュ博士がその真偽を確かめようと調査に乗り出したところ、「家族の歴史(親の出自や病歴、サクセスストーリーなど)を知っている子どものほうが、自分の人生をコントロールする能力がはるかに高い」ことが判明した。

そして、2001年の世界同時多発テロ後に同様の調査を行ったところ、ここでも「自分の家族についてよく知っている子ほど回復力があり、つまりはストレスからの影響を和らげられる」ことが確認された。

環境は人生のあらゆる面を作り出す

人間は「社会的動物」であり、共存しながら生きていく本能を備えている。この点を踏まえると、他者との関係を絶って生きるのではなく、自分にとって「いい影響」をもたらしてくれる人とつながるほうがはるかに有益といえるだろう。

1970年代、カナダ人心理学者のブルース・K・アレクサンダー博士は小さなおりにネズミを入れて実験を行った。

おりの中には水の入ったペットボトルが2本入っており、1本は通常の水、もう1本はヘロインやコカインを混ぜ込んだ水だ。すると、ほぼ100%、ネズミは麻薬が入った水に死ぬまで夢中になる。

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博士は麻薬漬けになったネズミの環境を変えることにした。ネズミが楽しめるおもちゃや走り回れるオープンスペース、そして何より「一緒に過ごせるネズミ」がたくさんいるおりに入れたのだ。そこにも前の実験で使った水を2本入れたところ、ネズミは麻薬入りの水をほとんど飲まず、通常の水を好んだ。

つまり、「いいおりに入ったネズミは、いいネズミになる」という結論が導き出されたのだ。

環境は、人生のあらゆる面を作り出す。「収入」から「価値観」、それに「ウエストの太さ・細さ」に至るまですべてだ。

積極的に環境を変えない限り、自分が生まれ育った環境が、残りの人生に多大な影響を直接的に及ぼすことは明らかだ。ビンの中のノミのように、ほとんどの人は集団思考の教義の下で動いている。しかし、それでは決して正しくはないのに、社会的な文化が勝ってしまう。

われわれはそろそろ、環境の影響を認識したうえで行動を取っていく時期に入っているのではないだろうか。

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