超売り手市場なのに「転職できない人」の盲点 恩恵に預かれるのは一部の若者と労働者だけ
今、転職市場は「売り手市場」、つまり職を求める人に有利な状況といわれている。テレビやインターネット上には求人サイトや転職エージェントの宣伝がたびたびあらわれ、電車に乗れば中途採用を考えている会社の合同企業説明会・転職フェアの車内広告をしばしば目にする。転職市場、つまり、求人サイトや転職フェアを運営する企業や転職エージェントなど、転職をとりまくマーケットは活況を呈している。
実際、転職フェアに足を運んだ人のなかには、有名企業をはじめ、さまざまな企業のブースがズラリと並ぶ光景に、企業の採用熱を肌で感じた人もいるかもしれない。こうした様子を目の当たりにして、「今、転職すれば、もっと条件のいいところで働けるのではないか」と考える人は多いようだ。
では実際の求人はどうかというと、厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」の「有効求人倍率」は2019年8月の数値で1.59倍。有効求人倍率とは、ハローワークで1人の求職者に対してどれだけ求人があったかを示す数値で、1を上回れば売り手市場、下回れば買い手市場とされている。
2017年4月に、バブル期のピークであった1990年7月の1.46倍を上回ってから現在まで、有効求人倍率は高水準をキープ。新聞やニュースでは「空前の売り手市場」「バブル期以降最高の売り手市場」などと報道されている。
「空前の売り手市場」に抱く違和感
しかし、人材紹介会社を経営し、実際に転職の現場に立っている私自身は、「空前の売り手市場」「企業の採用熱」といったことはまったく感じていない。
確かに一部の20代、30代にとっては売り手市場である。有効求人倍率が示すように求人自体も少なくない。私の会社にもいろいろな会社から「こういう人が欲しい」という注文がたくさん来る。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら