超売り手市場なのに「転職できない人」の盲点 恩恵に預かれるのは一部の若者と労働者だけ

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ところが、TOEICの点数800点以上が最低条件など、求められるスキルが非常に高いのだ。そのため、その企業に合いそうな人を紹介できなかったり、紹介できたとしてもなかなか採用に結びつかなかったりすることも多い。

企業側もそんな優秀な人間は転職市場に出てこないことを承知で、人材紹介会社に「一応求人だけ出しておく」のである。求人しておいて採用者が決まらないまま半年も1年も経過するというのも珍しくない。

つまり、そのポジションに人がいなくても、その会社はまわっているということだ。大学入試とは違い、募集したからといって必ずしも一定枠を採用する必要もない。若くて優秀な人ならばぜひとも採用したいが、バブルの頃のように誰でもいいから人手が欲しいわけではないのである。

そのうえ今、日本経済は成長しておらず、ほとんどの企業が守りに入っている。採用には1人当たり約50万円のコストがかかるといわれており、できるだけ採用コストを圧縮したいというのが企業の本音だ。つまり、今は「求人票はあるけれど、実際の求人はない」という不思議な現象が起きているのだ。

だから、企業の採用熱が特別高いわけではない。私に言わせれば、今は単に「転職市場」が活気を帯びているだけ。転職市場が活況なのは、1つには求人サイトや転職フェアをやると儲もうかる企業があるからだ。それもそういう企業が一生懸命に旗を振っていて、実態以上に盛り上げている感がある。

「売り手市場」は20代、30代のもの

優秀で伸びしろのある一部の20代、30代の転職希望者にとっては、確かに「売り手市場」といえる。しかし、それ以外の普通の人は、今のこの状況を決して「売り手市場」と勘違いしてはいけないのだ。

売り手市場といわれる際、その理由として挙げられるのが「少子高齢化による人手不足」「2020年の東京オリンピック・パラリンピックによる人材需要アップ」だ。

確かにこの2つの要因が有効求人倍率を押し上げている面はあるだろうが、だからといってこれらが転職市場に影響を与えているとか、以前よりも転職しやすくなっているということはない。その理由は、少子化やオリンピック需要で人手不足になっているのは労働集約型の職種が中心で、これらは求職者から避けられる傾向にあるからだ。

例えば、オリンピック需要として真っ先に思い浮かぶ職種としては建設業、そして海外からのお客様が増える、いわゆるインバウンド需要によるホテルやレストランなどのサービス業が挙げられる。

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