超売り手市場なのに「転職できない人」の盲点 恩恵に預かれるのは一部の若者と労働者だけ
厚生労働省が発表した2019年6月の「一般職業紹介状況」によると、「飲食物調理の職業」「接客・給仕の職業」などを含む「サービスの職業」の有効求人倍率(パートを除く。以下同)は2.99倍。「建設・採掘の職業」は5.43倍、そのうち「建設躯体工事の職業」に至っては11.59倍である。つまり、1人の求職者に対して11以上の求人があるのだ。確かにこれらの職業に就きたい人にとっては、「超売り手市場」といえる。
対して、知識集約型である「一般事務の職業」「会計事務の職業」などを含む「事務的職業」では、有効求人倍率は0.43倍。こちらは完全に「買い手市場」、つまりは採用する側に有利な状況だ。
では、東京オリンピックが決定する前の2013年8月の数字を見てみよう。「サービスの職業」の有効求人倍率は1.26倍、「建設・採掘の職業」は2.34倍。「事務的職業」は0.22 倍となっている。つまり、オリンピック開催決定前でもあとでも、もともと売り手市場の職種は売り手市場で、買い手市場の職種は買い手市場なのだ。
あわせて企業の規模別の求人状況も見てみよう。2019年6月の「一般職業紹介状況」の「規模別一般新規求人」(新卒・パートを除く)によると、ハローワークに最も多くの求人を出しているのは従業員数29人以下の企業で、求人数は35万9991件。対して、従業員数1000人以上の企業からの求人数は6251件、約60分の1だ。
有効求人倍率の高水準を支えているのは中小企業で、大企業に入りたいと思えば、そこは狭き門であることには変わりない。こうした現状を踏まえて考えると、少子高齢化による人手不足という理由についても、首を傾げざるをえない。
「今こそ転職のチャンス」と思ってはいけない
では、買い手市場であるはずの大企業は人手不足で困っていないかというと、そうではない。前述のとおり、私の経営する人材紹介会社には大企業からの求人も頻繁に来ている。
実は今、大企業では「雇用のミスマッチによる人材不足」が起きている。「雇用のミスマッチ」とは、求職側と求人側とのあいだでニーズが一致すると思われたため、1度は雇用に至ったものの、あとから不一致や食い違いが発覚することをいう。
建設業界や飲食業界で起きているのは、求人を出すものの応募が1人もないという「物理的な人手不足」だが、大企業はそれとは別の「人はいるのに欲しい人材が足りていない」という問題が起きているのだ。
つまり、企業に求められるような人材でない限りは、何社受けても絶対に採用されないということだ。「人手不足」のニュースを見聞きして、「今こそ転職のチャンス」などと思ってはいけない。
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