別居を勧める理由は第1に、今のところ双方に和解の気持ちがないからです。「タンゴは1人で踊れない」――これは喧嘩の責任は両方にあるという意味の英語表現だそうです。親子喧嘩の場合、一方がどうにも悪いという場合もありますが、あなたの夫と舅の喧嘩は、まさにタンゴの例えが当てはまります。
どちらの言い分もわかりますが、親子で水と油ほどの隔たりがあり、それで何十年ですから、少々のことでは仲直りはありえません。
息子の能力や個性を見ず厳しく叱りつづけた父と、それに押しつぶされたままの息子の積年のすれ違いや恨みは、あなたがどのように奮闘しても、和解は難しいと思われます。
和解の難しいところは当事者双方が「その気」にならなければならない点で、それはたゆまない周囲の働きかけが功を奏する場合もありますが、いずれにせよ、当事者の「その気」が合わなければなりません。
第2に、今は和解のタイミングではありません。私は多くの断絶した親子関係を見てきましたが、和解するにも時があるようです。
志賀直哉の私小説『和解』もそうですが、こんなにお互いが頑固なら、和解することなどほぼないだろうと思われる仲でも、何かがきっかけで和解に至ることは少なくありません。
それは親が老いて丸くなったとか、子どもがその老いを見て理屈抜きに親に寄り添った、その他理由はさまざまですが、時の流れは人を成長させ、性格を丸くしてくれる力があるのかもしれません。
私はこれまで、信じられないほど憎しみ合っていた人たちの奇跡と思える和解に何度か立ち会ってきましたが、和解した瞬間から当事者も周囲も安堵し喜びに包まれる光景は、本当に感動的です。
ですので、親子断絶しか方法がないと豪語する人の話を聞いても、それは本心ではないと私には聞こえています。
親子の縁など、そう簡単に切れるものではありません。
あなたの夫と舅の関係改善も、今は考えられないことでしょうが、何かがきっかけで双方が歩み寄る可能性は大いにあります。しかしその和解は今ではなく、あなたの夫の自立抜きにも考えられません。
夫の自立が、親子和解の近道
第3に、別居で自立されることを舅さんが望んでおられる可能性も高いです。舅さんの愚痴は、息子にしっかりしてほしいという、親なら当然の愛情の裏返しです。
あなたの夫が自立することは、彼自身が自信を持つことにつながり、それは親の望みでもあるわけですから、何よりの和解の近道です。
最後の第4に、このような今の状態が続けば、あなたまで両方に優しくしていられない精神状態になりかねず、家族全員が共倒れになります。
私は義両親とお嫁さんの真の関係は、別居・同居を問わないと、経験から思っています。ましてあなたたちが別居を選択しても、それは夫の意向で夫の自立のためなのです。
繰り返しになりますがこれからは、別居して夫が自立することが最優先で、義両親の老後の心配は、その次に考えることにしましょう。
別居されることで仮にその後も親子関係が好転しなくとも、少なくとも今以上には悪くなりません。それこそが、皆が救われる道だと確信します。
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