つくば市の発展に筑波大医学部が関係する理由 人材育成の東西格差は当面是正されそうにない
茨城県には茨城大学、筑波技術大学、筑波大学の3つの国立大学が存在します。
この中で筑波大学は各校の収入不足を補うために国が出している補助金である運営費交付金が2018年度で401億円。東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、九州大学に次ぐ6位です。旧七帝大である名古屋大学、北海道大学よりも上位に位置します。一方、茨城大学が受け取った運営費交付金は44位で70億円、筑波技術大学は81位で24億円です。
拙著『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』でも詳しく解説していますが、筑波大学の予算規模が大きいのは、医学部があるからです。
筑波大学の前身は1872年(明治5年)に、江戸幕府の直轄教学機関である昌平坂学問所(昌平黌)が移転した跡地に設立された東京師範学校です。その後、高等師範学校、東京高等師範学校を経て、1949年に東京文理科大学、東京農業教育専門学校、東京体育専門学校などと合併して、東京教育大学となります。その後、1973年に茨城県つくば市に移転し、筑波大学となります。
余談ですが、進学校として有名な筑波大学附属中学・高校、および筑波大学附属駒場中学・高校の前身は、それぞれ東京高等師範学校附属中学校・高等学校、東京農業教育専門学校附属中学校・高等学校です。筑波大学附属駒場中学・高校で農業実習があるのは、このような歴史があるからです。
大学が地域経済を支えている
話を戻しましょう。1973年に筑波大学が設立されたとき、新たに新設された学部がありました。それは医学専門学群(他の大学の医学部に相当)です。教員養成大学と医科大学では予算規模がまるで違います。巨大な公共事業が毎年実施されるのと同じ状況になりました。
筑波山麓の農村だったこの地は、現在、人口23万人抱える大都市に発展しました。筑波大学が受け取る運営費交付金の多くは人件費に充てられますから、学生を含む大学関係者、およびその家族だけで数万人が住んでいるこの都市に影響が及びます。大学が地域経済を支えていると言っても過言ではありません。
2005年(平成17年)には東京の秋葉原との間に、つくばエクスプレスが開通しました。さらに、2017年(平成29年)2月には圏央道の境古川ICとつくば中央ICの間が開通しました。インフラが整備され、つくば市は地価が上昇しています。
筑波大学からは多数のベンチャー企業が立ち上がっています。2018年度は111社で、これは東京大学、京都大学についで3位です。
2014年3月にはロボットスーツ「HAL」を開発するサイバーダイン社が東京証券所マザーズに上場したことが話題となりました。サイバーダイン社は世界展開を進めており、「HAL」は米国でも医療機器として承認され、脳卒中後のリハビリなどに利用されています。
創業者の山海嘉之氏は1987年に筑波大学を卒業した工学者です。岡山朝日高校を卒業し、筑波大学に進学しました。筑波大学の誘致が、この地に全国から優秀な人材を集め、画期的な医工連携の成果を産んだと言えるでしょう。つくば市は、医学部の誘致が町興しに繋がりました。
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