つくば市の発展に筑波大医学部が関係する理由

人材育成の東西格差は当面是正されそうにない

このとき、新たに国立の医学部が設置された県の数は、北海道1、東北1、関東1、甲信越1、東海1、北陸2、近畿1、四国3、中国1、九州4です。関東より東には3つしか設置されていないのに、中国・四国・九州だけで8つです。

1975年当時、千葉県の人口は475万人でした。四国の人口は約400万人です。千葉県には県内に千葉大学があるため、医学部は新設されず、四国にはすでに存在した徳島大学以外に新たに3つの医学部が新設されました。

九州や北陸の状況も四国と同じです。このようにして、医師養成数の格差は、さらに拡大しました。

さらに、一部の都道府県では国立の医学部が設立されませんでした。それは和歌山、奈良、神奈川、埼玉、栃木、福島、岩手県です。すべて戊辰戦争では佐幕派だった地域です。九州・中国地方・四国の合計16の県にはすべて国立の医学部があるのとは対照的です。

1897年(明治30年)に開設された私立岩手病院を前身とする岩手医科大学以外は、第2次世界大戦以降に設立されたものばかりです。和歌山県立医科大学、奈良県立医科大学、福島県立医科大学、横浜市立大学は戦時中の医学専門学校が、戦後に公立大学(都道府県や市町村立)医学部に昇格しましたし、埼玉医科大学と獨協医科大学は高度成長期に設立された私立大学です。どうして、これらの県には国立大学の医学部を設置しなかったのでしょうか。

東日本は高度成長期以降、人口が急増

さらに、東日本にとって不幸だったのは、高度成長期以降、この地域の人口が急速に増加したことです。

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1975年から2015年の間に、日本の人口は1億1194万人から1億2701万人に、13%増えています。一番人口が増えたのは関東地方で、増加率は31%です。一方、近畿地方は約10%。九州は5%。四国に至ってはマイナス5%です。この結果、関東での医師養成数の不足は、益々深刻化しました。

ところが、1980年代の「医療費亡国論」 や「医師過剰論」 の登場とともに、各県に最低1つの医学部を作ろうという「1県1医大構想」の主旨が、「1つの県には1つ医学部があれば十分」と日本医師会などの既得権者にねじ曲がった形で利用されました。千葉県成田市に医学部を新設する際には、「千葉県にはすでに千葉大学がある」「もう1つ医学部を作ると、現場から医師がひきぬかれる」と医学部新設不要の言いわけとして使われました。皮肉なことです。当面人材育成の東西格差は是正されそうにありません。

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