先進諸国だけでなく、中国やインドなど新興国でも、情報通信技術は社会に急速に広まって、人々の生活を大きく変えている。こうした中で世界経済の成長速度は鈍化傾向にあるように見える。特に日本を筆頭に先進諸国経済の平均的な経済成長率の鈍化が目立つ。この原因のひとつとして、経済成長を測る尺度として使っているGDP(国内総生産)が時代の変化に対応できていないのではないか、という指摘がある。
GDPは国連などが定めているSNA(国民経済計算体系、Systems of National Accounts)の中の代表的な経済指標だ。デジタル経済で急速に拡大していると見られている経済活動のうち、GDPに反映されていないものには、①現在のSNAの考え方ではGDPに計上しないことになっているもの、②GDPに計上するべきだが漏れてしまっているもの、の2つがある。
GDPに計上されていないものは数千億円に
例えば、下表のように吉岡真史氏は2018年にデジタル経済化のひとつであるシェアリング・エコノミーについて分析し、①に分類される生産の規模を2700~2750億円程度、②を950~1350億円程度と推計している(『シェアリング・エコノミーの GDP 統計における捕捉の現状』〈「季刊国民経済計算」第 164 号〉、内閣府経済社会総合研究所)。
経済成長の鈍化を説明するには規模は小さいが、無視できない影響があるといえるだろう。
②のようにGDPに本来計上されるべきものが漏れてしまうのは、新しい経済活動を捕捉するような統計の整備が行われていないことや、実物経済の企業活動に比べてデジタル経済活動の捕捉が困難だということが原因となっている。
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