FRB(米連邦準備制度理事会)は3日に臨時のFOMC(連邦公開市場委員会)を開催し、0.5%の緊急利下げを行った。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化やそれを恐れる市場の動揺を止めようという意図だ。17~18日に定例の委員会が予定されているにも関わらず緊急利下げを行い、幅も通例の0.25%の2倍とすることで、サプライズと受け止められることを期待した。だが、市場はすでに織り込み済みという反応を示し、当日のダウ工業株30種平均は785ドルの大幅安で取引を終了した。
今回のコロナウイルスの感染拡大が経済に与える影響を考えるのには、同様に経済的ではない要因である地震や台風・水害などの自然災害が参考になる。しかし、これらの要因とはさまざまな違いもあり、当然のことながら結果も異なるものになる。
被災地域だけでなくサプライチェーンで影響拡大
第一に、被害の及ぶ範囲の違いである。まず、自然災害では日本全体が直接的な打撃を受けることはありえなくはないが、多くは被災地域が限定的である。一方、今回の新型コロナウイルスの感染では3月4日現在で、25都道府県で感染者が出ているが、今後さらに地域が拡大していく可能性が高い。
2011年に発生した東日本大震災では被災した地域は広範囲だったが、被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県の経済規模を合計しても、日本全体の3.6%に過ぎなかった。
東京への一極集中が問題となっているが、仮に、東京が被災した場合の影響はほかの地域に比べて非常に大きくなる。しかし、それでも東京都の経済活動の日本全体に占めるシェアは2016年度で19.0%で、神奈川、千葉、埼玉を加えても33.1%だ。
1995年に発生した阪神淡路大震災は、兵庫、大阪という経済活動の集積地が被害を受けた。兵庫県の経済規模は日本全体の3.8%、大阪府を加えると10%を超えるが、日本経済に与えた影響は明らかに、東日本大震災のほうが大きかった。これは、被災地域の被害がより深刻だったことに加えて、原子力発電所の停止などにより東北地方だけでなく関東においても電力供給の不足が長引いたことが大きかった。
直接被害を受ける地域が限定されていても、経済活動への影響が日本全体へと波及する原因は、原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売に至る、サプライチェーンの一部が被災地域に存在することだ。これは製品の供給全体に影響を及ぼす。
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