新型コロナの日本経済への影響ととるべき政策 過去の自然災害などとの違いを踏まえる必要

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しかし感染症の場合には、流行が去った後に購入が先送りされていた耐久消費財の需要が顕在化するということはあるだろうが、自然災害のような復興需要は発生しないので、GDPがこうした需要によって押し上げられることは期待できない。もっとも、自然災害とは異なって企業が生産設備の再建を行う必要がないという点は、企業収益にはプラスであり株式市場にとって良い材料だ。

また、家計が住宅を再建する負担がないのは、一般的な消費にはプラスになるはずである。政府が行う復興事業は財政赤字の拡大と増税によって賄われており、需要の創出の一方で負担増による家計消費の押し下げ要因にもなっていたので、復興需要を過大評価すべきではないだろう。

東日本大震災後には円高が進んだ。収益悪化への対応や工場設備を復旧するための資金に充てるために、海外にあった資金を国内に戻したことも原因とみられている。その後、復興需要が顕在化したことで日本の貿易・サービス収支は大幅な赤字となり、経常収支の黒字も縮小して一時赤字となった。こうした動きには消費税率の引き上げなどの政策や原油価格の動きも影響しているが、新型コロナウイルスの問題が収まっても、このような国際収支の動きを作り出す要因にはならないはずである。

海外経済悪化の影響も日本に及ぶ

最も大きな違いは、日本で地震や台風などの自然災害が起きても、海外の国々が直接打撃を受けることはないが、感染症の場合には海外も打撃を受けているので、海外経済の悪化が日本経済に影響を与えるということだ。

2005年に東南アジアで猛威を振るった高病原性鳥インフルエンザH5N1亜型、2012年に初めて患者が見つかったMERS(中東呼吸器症候群)では、日本国内で感染者が出ることはなかったし、日本経済への顕著な影響もみられなかった。しかし、2002年冬から2003年夏にかけて中国南部を中心に感染が広まったSARS(重症急性呼吸器症候群)では、日本国内では感染者は出なかったものの、回復が続いていた日本の景気は一時停滞に陥った。

これには、イラク情勢の悪化という要因もあるが、アメリカやアジア地域の経済が減速して日本の輸出の伸びが鈍化し、生産が伸びなくなってしまったことが影響している。その後、SARSが終息に向かいイラク情勢も落ち着くとともに、日本の輸出は回復し景気は再び持ち直した。

今回の新型コロナウイルスでも、世界経済に最初に顕著な影響が見え出したのは、中国で感染が拡大して自動車部品の生産がストップした影響が、サプライチェーンを通じて世界の自動車生産に波及したことだ。日本では中国人観光客の激減がインバウンド需要に大きく依存していた百貨店や観光地の経済に打撃を与えている。

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